鏡餅にするめを飾る意味とは?地域や縁起物の由来&飾り方について

鏡餅

鏡餅にするめを飾る意味とは?地域や縁起物の由来&飾り方について

お正月に各家庭で飾られる鏡餅。

その上にそろりと添えられた、するめを見かけたことはありませんか。

普段何気なく目にしているこの組み合わせですが、なぜ鏡餅と一緒にするめを飾るのか、その本当の意味について疑問に思った方もいるかもしれません。

実はこの古くからの習慣には、新年への深い願いが込められた縁起物としての役割があり、地域によっても様々な違いが見られます。

この記事では、鏡餅とするめにまつわる意味や正しい飾り方、そして関連する興味深い文化について、詳しく解説していきます。

この記事を読んでわかること
  • 鏡餅にするめを飾る理由
  • するめや昆布を飾る地域の習慣
  • 鏡餅の正しい飾り方と縁起物の意味
  • 鏡餅に関する興味深い豆知識

鏡餅にするめを飾る意味とは?由来や飾り方

この章の内容
  • 鏡餅と一緒にするめを飾る意味は?
  • 正月にするめを飾る地域はどこ?
  • スルメに昆布を添える地域もある
  • 鏡餅のするめはどこに敷くの?
  • 正月以外にもするめは祝儀や縁起物で使われる

鏡餅と一緒にするめを飾る意味は?

鏡餅と一緒にするめを飾るのは、単なる慣習ではなく、新しい年が良い一年になるようにとの願いを込めた、非常に意義深い縁起担ぎです。

するめという一つの食材には、実に複数の良い意味が込められており、古くから日本のお正月の飾りとして大切にされてきました。

主に、するめには「家庭円満」「幸せの継続」「金運上昇」という、代表的な3つの意味があるとされています。

するめに込められた3つの願い

  • 家庭円満・一家安泰
    するめは、おめでたい場面で「寿留女」という美しい当て字で書かれることがあります。「寿を留める女」と書くこの言葉には、嫁いだ女性がその家に末永く留まり、幸せな家庭を築いてほしいという願いが込められており、家庭円満や一家安泰の象徴とされているのです。
  • 幸せの継続
    するめは、イカの水分を抜いて乾燥させた保存食であり、非常に日持ちが良いという特徴があります。その長期保存できる性質から、「この幸せが長く、末永く続きますように」という願いが込められています。また、武家社会では「武運長久(ぶうんちょうきゅう)」、つまり武士としての幸運が長く続くことを願う縁起物としても重宝されました。
  • 金運上昇
    古く室町時代の言葉で、お金のことを「お足」と呼んでいました。そのため、たくさんの足を持つイカ(するめ)は、非常に縁起が良いと考えられてきたのです。多くの足を持つするめを飾ることで、「お金(お足)に困ることがないように」という、豊かな一年を願う金運上昇の意味が込められています。

このように、するめは一つ飾るだけで、家族の幸せから財産まで、様々な幸福を願うことができる、万能で縁起の良いお飾りなのです。

正月にするめを飾る地域はどこ?

鏡餅にするめを飾るという習慣は、特定の都道府県や地域に限定されているものではなく、全国の様々な家庭で古くから行われてきました。

しかしながら、鏡餅の飾り方は地域やそれぞれの家庭の考えによって大きく異なり、するめが絶対に欠かせない必須の飾りというわけではありません。

例えば、関西地方の一部で豊作を願う「串柿」を飾るように、するめもまた、各家庭が新年への特別な願いを込めて自由に選ぶ、数ある縁起物の中の一つとして位置づけられています。

するめが乾物として全国に流通しやすかったことも、特定の地域に根差さず、広い範囲で飾られるようになった一因かもしれません。

近年では、住環境の変化やライフスタイルの多様化に伴い、真空パックの鏡餅が主流となり、飾りも簡略化される傾向にあります。

それでもなお、昔ながらの風習を大切にする地域や家庭では、年の初めに幸運を呼び込むため、今でも丁寧にするめが飾られています。

ご自身の家庭や地域の鏡餅の飾りを改めて観察してみるのも面白いかもしれませんね。

もしかすると、これまで当たり前だと思っていた飾りの一つ一つに、知らなかった特別な意味や歴史が隠されている可能性があります。

スルメに昆布を添える地域もある

するめだけでなく、昆布も一緒に鏡餅に飾り、縁起の良さをさらに高める地域や家庭も少なくありません。

昆布もするめと同様に、お祝い事には欠かせない、非常に縁起の良い食材として古くから日本人に親しまれてきました。

昆布を飾ることには、言葉遊びやその生態から生まれた、以下のような複数の意味が込められています。

昆布に込められた願い

  • よろこぶ」という語呂合わせから、新しい年が喜びに満ちた一年になるようにとの願いが込められています。
  • 古くは「広布(ひろめ)」と呼ばれていたことから、「喜びが世に広まる」「評判が広まる」といった一家の発展を願う意味もあります。
  • 「子生(こぶ)」という字を当てることで、子宝に恵まれ、子孫が代々繁栄していくことを願います。
  • かつて蝦夷(現在の北海道)で採れたことから「夷子布(えびすめ)」とも呼ばれ、七福神の一柱であり漁業や商売繁盛の神様である恵比寿様にあやかり、福を授かるという意味合いも持ちます。

海の幸であるするめ(家庭円満・金運)と昆布(発展・子孫繁栄)を一緒に飾ることで、様々な方面からの幸福を呼び込みたいという、日本人の厚い信仰心が表れていると言えるでしょう。

鏡餅のするめはどこに敷くの?

するめを飾る場所に、全国統一で定められた厳密なルールは存在しません。

しかし、地域や家庭で受け継がれてきた、一般的ないくつかの飾り方があります。

最も伝統的な飾り方では、三方(さんぽう)と呼ばれる専用の台座の上に、四方紅(しほうべに)という四方を赤く縁取った紙を敷きます。

その上に、裏白(うらじろ)やゆずり葉といった他の縁起物と一緒に置くのが基本とされています。

また、お餅の一段目と二段目の間に挟み込むという方法もありますが、これはお餅を自家製していた時代ならではの飾り方と言えるかもしれません。

注意点:現代のパック入り鏡餅の場合
近年主流となっている真空パック入りの鏡餅は、衛生的に個包装されているため、お餅の間に飾りを挟むことは困難です。

その場合は、無理にこじ開けたりせず、お餅の周りにバランス良く配置したり、橙など他の飾りの横に美しく添えたりするのが良いでしょう。

製品によっては、箱の一部が飾り台になるものもありますので、説明書きに従うのが適切です。

最も大切なことは、形にこだわりすぎることよりも、新しい年の神様である「年神様」へのお供え物として、感謝と敬意の気持ちを込めて丁寧に飾ることです。

ご家庭にある鏡餅の大きさや形に合わせて、最も美しく見える場所に飾りましょう。

正月以外にもするめは祝儀や縁起物で使われる

するめが縁起物としてその存在感を発揮するのは、お正月の期間だけではありません。

そのおめでたい意味合いから、日本の様々な伝統的な儀式や祝儀の品として、古くから人々の暮らしの節目で用いられてきました。

中でも特に有名なのが、結婚の儀式である結納品としてのするめです。

「寿留女」の当て字を使い、花嫁が嫁ぎ先に末永く留まり、幸せな家庭を築いてほしいという深い願いを込めて、新郎側から新婦側へと贈られます。

また、神事との関わりも非常に深く、古くから神様へのお供え物として重要な役割を担ってきました。

例えば、日本の国技である大相撲の土俵の中央には、その土地の神様を鎮めるための「鎮物(しずめもの)」として、洗い米や勝栗などと共にするめが厳かに埋められています。(出典:コトバンク「土俵祭」

するめが使われる祝儀・神事の例
場面意味・役割
結納「寿留女」として、家庭円満や末永い幸せを願う重要な縁起物。
神事(地鎮祭など)海の幸の代表格として、土地の神様へのお供え物とされる。
大相撲土俵の神様への供物「鎮物」の一つとして土俵の下に埋められる。
恵比寿講商売繁盛の神様である恵比寿様への感謝を示すお供え物として飾られる。

このように、するめは日本の伝統文化において、人生の大切な節目やお祝い事に欠かせない、特別な意味を持つ存在なのです。

鏡餅とするめの意味について深堀り

この章の内容
  • お正月にいかを食べる意味は?
  • 雑煮にスルメを入れる意味は?
  • するめ以外で鏡餅と一緒に飾るものは何がある?
  • 鏡餅のてっぺんはみかんではない?
  • 鏡餅はなぜ「鏡」というのか?

お正月にいかを食べる意味は?

お正月にいか(するめ)を食べることには、鏡餅に飾るのと同様、そこに込められた縁起を体に取り込むという意味合いがあります

そもそも鏡餅は、新年にやってくる年神様の力が宿る「依り代(よりしろ)」とされています。

そのため、松の内が明けた「鏡開き」の日に、そのお餅をお下がりとして家族でいただくことで、一年間の無病息災を願うのです。

この考え方は「神人共食(しんじんきょうしょく)」と呼ばれ、神様にお供えしたものを人々が共に食べることで、神様との結びつきを深め、その力を分けてもらうという日本の伝統的な信仰に基づいています。

これと同じように、縁起物として飾られたするめを食べることで、そこに込められた家庭円満や金運上昇といった幸運の力を、直接体内に取り込もうとするわけです。

飾ったするめのおいしい食べ方

飾っておいたするめは、鏡開きの際に軽く炙ってお酒の肴にするのが一般的です。

また、キッチンバサミで細く切り、水に一晩浸しておくと、非常に濃厚な出汁が取れます。

この出汁を使って、煮物や炊き込みご飯、お雑煮などを作るのもおすすめです。

単なる飾りで終わらせず、感謝の気持ちを込めて最後まで美味しくいただくことで、神様からの恵みを余すところなく受けることができるとされているのです。

雑煮にスルメを入れる意味は?

地域によっては、お雑煮の出汁のベースとしてするめを使ったり、具材そのものとして入れたりする独自の食文化があります。

これもまた、新年への強い願いを込めた縁起担ぎの一つです。

お雑煮は、年神様にお供えしたお餅(魂の象徴)を、その土地で採れた野菜や魚介などと一緒に煮ていただく、一年の始まりを祝う神聖な料理です。

その特別な一杯に、金運上昇の象徴であるするめを加えることで、一年の豊かさと家族の繁栄をより一層強く願うという意味が込められています。

味の面でも非常に重要な役割
するめは、煮ることで非常に濃厚で美味しい出汁が出ます。

昆布や鰹節とはまた違った、香ばしくて深いコクのある旨味は、お雑煮の味を格段に引き上げます。

特に、海の幸が豊富な地域の雑煮において、その風味は欠かせないものとなっています。

お正月の特別なご馳走にふさわしい、深みのある味わいを生み出してくれるのです。

年神様の力が宿ったお餅と、金運や幸せの継続を意味するするめを一緒にいただくことで、最高の新年のスタートを切りたいという、先人たちの切実な願いが込められた食文化と言えるでしょう。

するめ以外で鏡餅と一緒に飾るものは何がある?

鏡餅には、するめの他にも、新年の幸せを願うための様々な縁起物が飾られます。

それぞれに深い意味が込められており、これらの飾りが合わさることで、年神様をお迎えするための神聖なお供え物としての鏡餅が完成します。

ここでは、代表的な飾りとその意味について、改めてご紹介します。

これらの飾りは、鏡餅全体で、天皇家に伝わる「三種の神器」に見立てているという説もあります。

鏡餅の主な飾りとその意味
飾り込められた意味三種の神器との関連(説)
橙(だいだい)木から落ちずに実がなることから「代々」家が続くことを願う。八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)
裏白(うらじろ)葉の裏が白いことから清廉潔白を表し、夫婦円満や長寿を願う。
ゆずり葉新しい葉が出てから古い葉が落ちるため、子孫繁栄や家督が続くことを願う。
串柿(くしがき)「嘉来(かき)」として喜びをかき集める。努力が実を結ぶ象徴。天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)
伊勢海老腰が曲がった姿から、腰が曲がるまでの長寿を願う。

これらの飾りは、もちろん地域や家庭によって異なりますが、すべては新しい年の神様である「年神様」に敬意を示し、その家が一年を通じて栄え、家族全員が健康に過ごせるようにという切実な願いが込められているのです。(参考:鏡もちの由来と美味しく食べるコツ:農林水産省

鏡餅のてっぺんはみかんではない?

多くの方が鏡餅のてっぺんに乗っているオレンジ色の果物を「みかん」だと認識していますが、実は本来は「橙(だいだい)」という別の柑橘類を飾るのが古くからの正しい風習です

橙は、一度実が熟しても簡単には枝から落ちず、時には数年にわたって木に留まり続けるという、非常に強い生命力を持っています。

この特徴から、一つの木に親・子・孫の何代もの実が共存することになぞらえ、「家が代々(だいだい)繁栄し続けますように」という子孫繁栄の願いを込めて飾られるようになりました。

なぜ、みかんが使われるようになったのか?
近年、お正月の時期に縁起物としての橙そのものが手に入りにくくなったことや、核家族化に伴い鏡餅のサイズがコンパクトになったことなどから、見た目が似ていて大きさが手頃な「みかん」が代用品として広く使われるようになったと言われています。

代用すること自体は問題ありませんが、本来の意味を知っておくと、より一層お正月への思いが深まるでしょう。

もし八百屋やスーパーで「橙」を見かける機会があれば、その本来の意味を思い出しながら、伝統に倣って飾ってみるのも良いかもしれません。

鏡餅はなぜ「鏡」というのか?

お餅であるにもかかわらず、なぜ「鏡餅」と呼ばれるのでしょうか。

これにはいくつかの説がありますが、最も有力とされているのは、その丸い形が、古代の祭祀で用いられていた神聖な道具「銅鏡(どうきょう)」に似ているからというものです。

古来、鏡は単に姿を映す道具ではなく、光を反射して輝く様子から太陽神の象徴とされ、神様が宿る神聖なものとして扱われていました。

実際に、皇位の証として代々受け継がれる「三種の神器」の一つが「八咫鏡(やたのかがみ)」であることからも、鏡がいかに重要視されていたかがうかがえます。

そのため、一年の初めにお迎えする最も大切な神様である年神様の依り代(いらっしゃる場所)となるお餅を、神聖な鏡の形に似せることで、最大限の敬意と感謝の気持ちを表したのです。

また、人の魂は「心臓」にあると考えられていたことから、その心臓の形を模した丸い形になったという説もあります。

ちなみに、お餅を大小二段に重ねるのにも意味があります。

「福が重なる」「円満に年を重ねる」といった縁起の良い願いや、太陽と月(陰陽)を表しているなど、こちらも先人たちの幸せへの願いが込められているのです。

まとめ:鏡餅のするめの意味は?

この記事の重要ポイントをまとめます。

  • するめを飾るのは家庭円満や金運上昇を願う縁起担ぎのため
  • 「寿留女」という当て字は家庭が末永く続くことを意味する
  • 日持ちすることから幸せが長く続くことへの願いが込められる
  • イカの足が多いことから「お足」に困らない金運の象徴とされる
  • するめを飾る習慣は特定の地域に限定されるものではない
  • 縁起の良い「よろこぶ」にかけた昆布も一緒に飾られることがある
  • 飾り方は三方の上や餅の周りなど様々で厳密な決まりはない
  • するめは結納品や神事のお供え物など正月以外でも使われる
  • 飾ったするめは鏡開きの際に食べることで幸運を取り込む
  • 雑煮の出汁や具材として使い縁起を担ぐ地域もある
  • 鏡餅にはするめ以外にも橙や裏白など様々な縁起物が飾られる
  • てっぺんに乗っている果物は本来「橙」であり「代々」の繁栄を願う
  • みかんは橙の代用品として広く使われている
  • 鏡餅という名称は神聖な祭器であった昔の銅鏡に形が似ていることに由来する
  • 二段重ねには福が重なる、円満に年を重ねるといった意味がある