鏡餅を仏滅に飾っても大丈夫?六曜との関係&飾る際に注意すること
年末が近づき、お正月の準備を始める中で、鏡餅を飾る日取りに悩むことはありませんか。
毎年繰り返される慣習でありながら、「この日で本当に合っているのだろうか」と不安になる方も多いでしょう。
特に、カレンダーを見て「仏滅」とあると、縁起を気にしてしまいがちです。
本当に仏滅に鏡餅を飾ってはいけないのでしょうか。
この記事では、鏡餅と仏滅の本来の関係性から、本当に避けるべき日、そして飾る際に知っておきたい様々な注意点まで、背景にある文化的な意味合いを交えながら、分かりやすく解説します。
- 鏡餅と仏滅の関係性について
- 六曜の本来の意味について
- 正月飾りを飾るのに最適な日と避けるべき日
- 鏡餅の飾り方に関する作法や注意点
鏡餅を仏滅に飾ることに問題はない?
鏡餅を仏滅に飾っても大丈夫?
結論から言うと、鏡餅を仏滅に飾っても全く問題ありません。
多くの人が「仏滅」という言葉の持つ強い響きから、お祝い事や神聖な行事には不向きな凶日だと考えがちです。
しかし、これは本来の日本の文化や宗教的な考え方とは少し異なります。
お正月という行事において最も大切なのは、日柄を気にしすぎることよりも、新しい年の神様である「年神様」を敬い、感謝を込めてお迎えする準備を整えることです。
ポイント
鏡餅を飾る際に、六曜(仏滅や大安など)を気にする必要はありません。
それよりも、後述する日本古来の縁起に基づいた日取りや、感謝の気持ちを込めて丁寧に飾ることを大切にしましょう。
そもそも、お正月に鏡餅を飾るのは、その年の実りと幸せをもたらすために家々を訪れる「年神様」をお迎えするための、神道に由来する習慣です。
この日本古来の風習と、後から中国より伝わった六曜の考え方は、文化的背景が異なるため、直接的な関係性がないのです。
六曜は神道や仏教とは無関係
カレンダーでよく目にする「六曜(ろくよう)」は、もともと中国で時刻の吉凶を占うために使われていた考え方です。
日本には鎌倉時代から室町時代にかけて伝わったとされていますが、神道や仏教といった日本の伝統的な宗教とは直接的な関係はありません。
「仏滅」という字面から仏教との関連を想像する方も多いですが、これも誤解であり、元々は「すべてが虚しい」という意味の「物滅」と書かれていたものが、後に「仏」の字が当てられたと言われています。
つまり、六曜はあくまで民間で広まった一種の俗信であり、神社の神事やお寺の仏事において、六曜が正式な判断基準とされることはないのです。
実際に、奈良県神社庁の公式サイトでは、「大安や仏滅など日の吉凶について」の問いに対し、神社の祭儀は古来からの由緒に基づいて斎行されており六曜とは関係がない、という趣旨の見解が示されています。
「仏滅」に「仏」という漢字が使われているため、仏教行事と深い関わりがあると思われがちですが、実は無関係なんです。
むしろ、仏事(法事など)は仏滅に行っても良いとされることもあるくらいです。
六曜のそれぞれの意味を理解しておくと、なぜ神事である鏡餅飾りと切り離して考えて良いのかが、より分かりやすくなります。
先勝(せんしょう) | 午前は吉、午後は凶。急ぐことが良いとされる日。 |
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友引(ともびき) | 朝夕は吉、昼は凶。「友を引く」という意味から葬儀を避ける風習がある。 |
先負(せんぷ) | 午前は凶、午後は吉。何事も控えめが良いとされる日。 |
仏滅(ぶつめつ) | 一日を通して凶とされるが、物事が一度滅び新しく始まるとも解釈される日。 |
大安(たいあん) | 一日を通して大吉。何事にも良いとされる日。 |
赤口(しゃっこう) | 正午ごろのみ吉で、他は凶。火や刃物に注意すべきとされる日。 |
鏡餅を飾ってはいけない日付や時間帯は?
仏滅よりも、鏡餅を飾る際に本当に避けるべきとされる日付があります。
それは12月29日と12月31日です。
注意:避けるべき2つの日付
・12月29日:「九」の読みが「苦」に通じるため、「二重苦」や「苦餅(くもち)」を連想させ、縁起が悪い日とされています。
・12月31日:大晦日に飾ることを「一夜飾り」と呼びます。これは葬儀の飾り付け(通夜飾り)を連想させるため、年神様に対して誠意に欠ける失礼な行為と考えられています。
これらの考え方は、六曜よりも古くから日本人の生活に根付いている縁起担ぎです。
年神様を誠意をもってお迎えするためにも、この2日間は避けて準備するのが望ましいでしょう。
時間帯については特に決まりはありませんが、大掃除などが終わり、家が清められた後の落ち着いた時間帯に、慌ただしくなく飾るのが良いとされています。
豆知識として、地域によっては29日を「ふく(福)」と読み、縁起が良いとしてあえてこの日に準備をするところもあります。
しかし、一般的には避ける風習が広く浸透しているため、迷った場合は避けておくのが無難です。
鏡餅を飾るのに適した日付とかはある?
鏡餅を飾るのに最も縁起が良いとされている日は、12月28日です。
これは、漢数字の「八」が下に向かって広がる形をしていることから、「末広がり」を意味し、繁栄を願うお正月の準備にふさわしいとされているためです。
本来、お正月の準備は12月13日の「正月事始め」から始めるとされており、この日に行う大掃除は「煤払い(すすはらい)」と呼ばれます。
したがって、伝統に則れば12月13日以降であればいつ飾っても問題ありません。
しかし、現代ではクリスマスを楽しむ家庭が多いため、クリスマスが終わった後の12月26日や27日に飾り始めるのが一般的になっています。
もし28日までに飾れなかった場合は、前述の29日と31日を避け、12月30日に飾るのが良いでしょう。
飾る日のまとめ
・最適:12月28日(末広がりで縁起が良い)
・OK:12月13日~27日、30日
・NG:12月29日(二重苦)、31日(一夜飾り)
その他鏡餅を飾る際の縁起上の注意点は?
日付以外にも、鏡餅を飾る際にはいくつかの作法があります。
これらは単なる形式ではなく、年神様への敬意を示し、新年の様々な願いを込めるためのものです。
飾る前の準備
年神様は清浄な場所を好まれるため、鏡餅を飾る場所は事前に大掃除をして綺麗にしておくことが何よりも大切です。
一年の汚れを払い、神聖な場所を整えるという気持ちで、ほこりのない清らかな状態にしてからお供えしましょう。
飾り方と縁起物
鏡餅は、ただお餅を重ねるだけでなく、様々な縁起物と一緒に飾られます。
それぞれに新年の幸せを願う深い意味が込められています。
橙(だいだい) | 一つの木に新旧の実が同時になる性質から、家が「代々」栄えるようにという願い。 |
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裏白(うらじろ) | 葉の裏が白いことから「清廉潔白」を、左右対の葉から「夫婦円満」を表す。 |
ゆずり葉 | 新しい葉が出てから古い葉が落ちるため、家系が途絶えることなく「子孫繁栄」するようにという願い。 |
昆布(こんぶ) | 「よろこぶ」という語呂合わせから、「喜ぶ」につながる縁起物。 |
串柿(くしがき) | 干し柿を串に刺したもの。「嘉来(かき=喜びが来る)」に通じ、また三種の神器の一つである剣を表すとも言われる。 |
鏡餅を飾る方角に厳密な決まりはありませんが、その年の恵方や、太陽が昇る東向き、または明るい南向きが良いと言われることもあります。
ただし、最も重要なのは家の間取りに合わせて、家族が集まる中心的な場所や神棚など、清浄で敬意を払える場所に飾ることです。
鏡餅を仏滅に飾る以外の縁起と作法
神棚ではなく仏壇に鏡餅を供えてもOK?
鏡餅は、基本的には神道の神様である年神様へのお供え物です。
そのため、ご家庭に神棚がある場合は、まず神棚にお供えするのが最も丁寧で伝統的な形と言えます。
一方で、仏壇にお供えすることも一概に間違いとは言えません。
仏壇はご先祖様を祀る大切な場所です。
新年を無事に迎えられたことへの報告と感謝をご先祖様に伝えるという意味で、鏡餅をお供えするご家庭も多くあります。
これは、神様とご先祖様の双方を敬う、日本らしい考え方の表れとも言えるでしょう。
ただし、浄土真宗など一部の宗派では、お供えに関する独自の考え方があるため、心配な方は菩提寺(お付き合いのあるお寺)に一度確認してみると安心です。
神棚には「年神様への感謝」、仏壇には「ご先祖様への感謝」と、お供えする際の気持ちの向け先を意識すると、より心がこもりますね。
鏡餅を飾ってはいけない場所はある?
鏡餅の飾り場所については、様々な考え方があり、一概に「ここが絶対ダメ」という場所はありません。
しかし、年神様が滞在される場所として、敬意を欠くと考えられる場所は避けるのが一般的です。
注意が必要な場所
テレビの上や冷蔵庫の上、スピーカーの上など、騒がしい場所や常に熱を発する機器の上は、神様が落ち着いて滞在できないと考えられ、避けるべきとされています。
また、神様を見下ろすような低い場所に飾るのも失礼にあたります。
特に玄関やトイレについては、意見が分かれる代表的な場所です。
・玄関:家の入口であり年神様をお迎えする重要な場所として飾るべき、という考え方と、家の格としては下座にあたるため飾るべきではない、という考え方があります。
・トイレ:不浄な場所と捉えるため飾らない、という考え方と、トイレにも「厠神(かわやがみ)」という健康を守る大切な神様がいるためお供えする、という考え方があります。
これらは、どちらが正しいというわけではなく、地域の風習やご家庭の考え方を尊重するのが良いでしょう。
どの場所に飾るにせよ、常に清潔で、人々が見上げて敬意を払える場所を選ぶことが最も大切です。
鏡餅はレプリカを使っても問題ない?
鏡餅の本来の意味を考えると、食べられるお餅をお供えすることが理想です。
なぜなら、鏡餅は単なる飾りではなく、年神様の力が宿る「依り代(よりしろ)」だからです。
お正月が終わった後に、そのお餅を「鏡開き」で家族でいただくことで、神様の力、すなわち「御魂(みたま)」を分けていただき、その年一年の無病息災を願うという重要な意味があります。
しかし、現代の住宅事情やカビの発生といった衛生面への配慮から、ガラス製や木製、プラスチック製の置物(レプリカ)を飾りたいという方も多いでしょう。
その場合は、置物とは別に、小さなものでも良いので食べられるお餅を一緒にお供えするのがおすすめです。
そうすることで、インテリアとしての美しさと、日本の大切な伝統的な風習の両方を尊重することができます。
正月飾りは毎年同じものを使ってもいいの?
鏡餅を含むしめ縄や門松などの正月飾りは、毎年新しいものに交換するのが基本です。
これは、一年に一度訪れる年神様を、清浄で真新しい状態でお迎えするための大切な作法です。
古いものを使い回すことは、神様に対して失礼にあたると考えられているためです。
一年に一度いらっしゃる大切な神様ですから、感謝を込めて新しい飾りで清々しくお迎えしたい、という気持ちの表れですね。
役目を終えた古い正月飾りは、神社などで行われる「どんど焼き(左義長)」でお焚き上げをしてもらい、天にお帰りになる年神様をお見送りするのが丁寧な習わしです。
(参考:ウェザーニュース「15日は「どんど焼き」 不思議な名前の由来とは?」)
前述の通り、ガラス製などの高価なインテリアとして作られた正月飾りについては、この限りではありません。
しかし、伝統的な意味合いを持つお餅やしめ縄は、一年で役目を終える「年神様のためのもの」と考え、毎年新しく準備しましょう。
お供え餅を下ろす日は?
お供えした鏡餅は、「鏡開き(かがみびらき)」の日に下げていただきます。
この鏡開きの日付は、「松の内」と呼ばれる期間がいつまでかによって、地域で異なります。
鏡開きの主な日付
・関東地方など(松の内が1月7日まで):一般的に1月11日
・関西地方など(松の内が1月15日まで):一般的に1月15日または20日
この日付の違いは、江戸時代の武家の慣習に由来します。
徳川三代将軍・家光が4月20日に亡くなったため、月命日の20日を避ける武家の慣習から、江戸幕府が鏡開きの日を1月11日に変更したことが関東を中心に広まったとされています。
お住まいの地域の慣習に合わせて、鏡開きを行いましょう。
下げたお餅は、包丁で切ることは「切腹」を連想させるため避け、木槌などで叩き割るのが習わしです。
そして、お雑煮やおしるこなどにして、家族で感謝しながらいただくことで、年神様からの力を授かります。
鏡餅を仏滅に飾ることに問題はない?まとめ
この記事の重要ポイントをまとめます。
- 鏡餅を仏滅の日に飾ることに問題はない
- 六曜は中国由来の考え方で神道や仏教とは直接関係がない
- 仏滅よりも縁起が悪いとされるのは12月29日と31日
- 29日は「二重苦」、31日は「一夜飾り」として避けられる
- 鏡餅を飾るのに最も適した日は末広がりの12月28日
- 28日を逃した場合は30日に飾るのがよい
- 飾る場所は事前に大掃除をして清浄に保つ
- 鏡餅は神様へのお供えなので神棚が最もふさわしい
- ご先祖様への感謝として仏壇にお供えするのも良い
- 玄関やトイレに飾るかは地域の風習や家庭の考え方による
- テレビの上など騒がしい場所は避けるべき
- 伝統的には食べられるお餅を供えることが重要
- 置物を飾る場合も小さくても良いので食べられるお餅を添えたい
- 正月飾りは毎年新しいものを用意するのがマナー
- 鏡餅を下げる「鏡開き」は関東で1月11日、関西で1月15日など地域差がある