鏡餅は仏壇に飾っても大丈夫?供え方や神棚との兼ね合いについて
新年を迎える準備として、多くのご家庭で鏡餅が飾られます。
古くからの慣習として神棚にお供えすることは広く知られていますが、日本の家庭では神棚と仏壇の両方を大切にしている場合も少なくありません。
そこで「ご先祖様にも新年のご挨拶をしたい」と考えたとき、「そもそも仏壇に鏡餅を飾っても大丈夫なのだろうか?」という疑問が浮かびます。
この記事では、仏壇へのお供えとしての鏡餅に関する、そうした基本的な疑問に丁寧にお答えします。
神道の神様と仏教のご先祖様、それぞれに対する鏡餅の意味合いの違いから、正しい飾り方、適切な個数、飾る期間、そして特に配慮が必要な喪中の場合の注意点まで、具体的かつ分かりやすく解説します。
この記事を最後までお読みいただくことで、安心して新年を迎える準備を進めることができるでしょう。
- 仏壇に鏡餅を飾る際の基本的な考え方
- 神棚と仏壇での鏡餅の飾り方の違い
- 鏡餅を飾る時期や下げ方のマナー
- 喪中など特別な場合の対応方法
鏡餅は仏壇に飾っても大丈夫なのか?
鏡餅は仏壇に飾っても大丈夫?
結論から申し上げますと、仏壇に鏡餅を飾ることは全く問題ありません。
むしろ、ご先祖様への感謝を示す素晴らしい行いとされています。
お正月は一年の始まりを祝う大切な節目です。
その特別な時に、ご先祖様にも感謝の気持ちを込めてお祝いの品をお供えするのは、とても良い習慣と言えるでしょう。
もともと鏡餅は、新年に各家庭へ幸福をもたらすために訪れる「歳神様(としがみさま)」という神道の神様をお迎えするためのお供え物です。
そのため神道の習慣というイメージが強いかもしれませんが、仏教においても餅は非常に重要なお供え物の一つなのです。
仏様へのお供えの基本「五供(ごくう)」
仏教では、お供えの基本として「香・花・灯明・浄水・飲食」の五つを「五供」と呼びます。
餅はこの中の「飲食(おんじき)」、つまり食べ物のお供えに含まれます。
飲食の中でも、主食であるご飯(仏飯)が最上位とされますが、餅はそれに次いで位の高いお供え物とされています。
古来、お米から作られるお餅は特別な日にしか食べられない貴重なご馳走であり、神聖な力が宿ると考えられてきました。
したがって、おめでたいお正月には、ご先祖様への一年間の感謝と新年のご挨拶として、ぜひ鏡餅をお供えしましょう。
神棚と仏壇の両方に飾ってもいい?
鏡餅は、神棚と仏壇の両方に鏡餅を飾ることが、より丁寧な形とされています。
これは、それぞれにお供えする目的と対象が明確に異なるためです。
両方にお供えすることで、神様とご先祖様の双方に敬意を払うことができます。
【対象と目的】神棚と仏壇での意味の違い
- 神棚の鏡餅:家に幸福や実りをもたらすために天から降りてこられる「歳神様」をお迎えするためのものです。
鏡餅は、歳神様が宿るための「依り代(よりしろ)」としての役割を持ちます。
- 仏壇の鏡餅:日々私たちを見守ってくださる仏様やご先祖様に対して、旧年中の感謝を伝え、新しい年も家族が健やかに過ごせるよう見守ってください、という願いを込めてお供えします。
このように、お供えする対象が神様とご先祖様で異なります。
どちらか一方だけという決まりはありませんので、両方にお供えするのが望ましいでしょう。
一般的には、神棚に飾る鏡餅をメインとし、仏壇にはそれよりも少し小さめのサイズのものを用意することが多いようです。
仏壇に鏡餅を飾る際の飾り方は?
仏壇に鏡餅を飾る際は、直接置くのではなく、敬意を示すために専用の仏具を使うのが正式な作法です。
ご先祖様へのお供え物ですので、心を込めて丁寧にお飾りしましょう。
まず、お供え物を乗せるための仏具を用意します。
一般的に多くの宗派で用いられるのが「高月(たかつき)」と呼ばれる、高い脚が付いた杯(さかずき)のような形をした仏具です。
一方で、浄土真宗の場合は「供笥(くげ)」という専用の仏具を用いるのが正式です。
この供笥は宗派によって形が異なり、本願寺派は六角形、大谷派は八角形のものを使います。
仏具を用意したら、その上に直接鏡餅を置くのではなく、二つ折りにした半紙や懐紙を敷き、その上に鏡餅を乗せると、より丁寧な飾り方になります。
これは、お供え物を清浄に保つという意味合いがあります。
半紙の折り方には、吉事と凶事で向きが違うという慣習もありますが(お正月は吉事の折り方)、現代ではそこまで厳密にこだわる必要はないでしょう。
鏡餅は仏壇に何個供えますか?
お供えする鏡餅の個数については、宗派やお寺の考え方、また地域の慣習によって異なるため、全国で統一された厳密なルールはありません。
最も大切なのは数にこだわることよりも、ご先祖様への感謝の気持ちですので、ご自宅の仏壇の大きさやスペースに合わせて、無理のない範囲で用意すれば問題ありません。
一般的には、以下の2つの飾り方が多く見られます。
- 1つお供えする場合:ご本尊様の一番近く、中央にお供えします。
- 一対(2つ)お供えする場合:仏壇の上段の左右に1つずつ、対になるようにお供えします。
仏具のお飾りでは「一対」が基本となることが多いため、スペースに余裕があれば左右に対で飾るとより丁寧な印象になります。
もしご自身の宗派での正式な飾り方や個数が気になる場合は、お付き合いのある菩提寺のご住職に尋ねてみたり、地域の仏具店や年長者に確認してみたりすると、より安心して準備ができるでしょう。
お正月に大小2個のお供え物をする意味は?
鏡餅が大小2つの丸い餅を重ねた形をしているのには、古くからの言い伝えに基づいた、いくつかの縁起の良い意味が込められています。
最も広く知られている説は、2つのお餅を重ねる姿が「福が重なる」「円満に年を重ねる」といった、幸福や長寿への願いを象徴しているというものです。
また、これ以外にも様々な意味合いがあるとされています。
- 陰陽説:大小それぞれの丸い餅が「太陽と月」、つまり「陽と陰」を表しているという考え方です。
- 三種の神器:鏡餅全体で、日本の神話に登場する三種の神器を見立てているという説もあります。鏡餅が「八咫鏡(やたのかがみ)」、上に乗せる橙が「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」、串柿が「天叢雲剣(あめのむら くものつるぎ)」を象徴するとされます。
そもそも「鏡餅」という名前の由来は、古代において神様が宿る神聖な祭具とされた「銅鏡」に形が似ていることからきています。
丸い形は人の魂(心臓)を表すとも言われ、そこに歳神様の力が宿ると考えられてきました。
いろいろな願いが込められているのですね。
ただの飾り物ではなく、家族の幸せを願う象徴として、意味を理解しながらお供えすると、より一層気持ちが伝わりそうです。
鏡餅を仏壇に飾っても大丈夫?その他の疑問
お供え餅と鏡餅の違いは?
「お供え餅」と「鏡餅」は、よく似た言葉ですが、厳密にはその目的や用途、飾る時期に違いがあります。
簡単に言えば、「お供え餅」という大きな括りの中に、お正月限定の特別な飾りである「鏡餅」が含まれる、と考えると分かりやすいでしょう。
お供え餅(広義) | 鏡餅(お正月のお供え餅) | |
---|---|---|
目的 | 故人やご先祖様への供養、感謝を示す | 歳神様への感謝と、一年の無病-息災・五穀豊穣を祈願する |
使用時期 | お盆、法事(特に四十九日)、お彼岸など仏教行事全般 | お正月期間のみ |
飾る場所 | 主に仏壇 | 主に神棚や床の間、玄関など(仏壇にもお供えする) |
形状 | 白い丸餅が基本だが、行事によって様々。(例:四十九日法要で供える「四十九日餅(傘餅)」など) | 大小二段重ねで、上に橙(だいだい)などを飾るのが一般的 |
例えば、故人が亡くなってから49日目に行われる四十九日法要では、「四十九日餅」または「傘餅」と呼ばれる、49個の小さな餅を積み重ねた特別なお供え餅を用意する風習があります。
これは故人の来世への旅立ちを助けるという意味合いを持つもので、鏡餅とは目的が全く異なります。
このように、鏡餅はお供え餅の中でも、特にお正月という「ハレの日」に特化した、新年を祝うための特別な飾りなのです。
仏壇の鏡餅はいつまで飾ればいい?
鏡餅を飾っておく期間は、お正月の間に歳神様が家に滞在されるとされる「松の内」までが一般的です。
この松の内の期間は、実は地域によって違いがあります。
一般的には、ウェザーニュースの記事によると関東地方では1月7日まで、関西地方では1月15日(小正月)までとされることが多いようです。
ご自身の地域の慣習に合わせて片付けるのが良いでしょう。
飾る日取りも縁起を担ぐ風習があり、末広がりの「八」が付く12月28日が最も良い日とされます。
一方で、「二重苦」を連想させる29日や、元旦に近すぎて「一夜飾り」となり神様に失礼とされる31日は避けるべきと言われています。
(出典:小田急百貨店オンラインショッピング)
鏡開きでいただく
お供えしていた鏡餅は、一般的に1月11日の「鏡開き」の日に下げて、家族でいただくのが古くからの習わしです。
(関西など松の内が15日までの地域では、15日や20日に鏡開きを行うこともあります)
鏡餅には歳神様の力が宿っている「御魂(みたま)」が宿っているとされ、それを食べることで神様の力を分けていただき、一年の無病-息災を願います。
鏡餅を包丁などの刃物で「切る」ことは、武家社会の風習から切腹を連想させ縁起が悪いとされ、木槌などで叩き割ることから「開く」という縁起の良い言葉が使われるようになりました。
固くなったお餅は、お雑煮やお汁粉、かき餅などにして、ご先祖様と神様への感謝の気持ちとともに美味しくいただきましょう。
喪中の場合、仏壇に鏡餅を飾ってもいいですか?
ご家族が亡くなられてから初めて迎えるお正月、つまり喪中の期間は、鏡餅をはじめとするお正月飾り全般を控えるのが基本です。
お正月飾りは、新年を祝い、歳神様をお迎えするためのものであり、慶事、つまり「お祝い事」にあたります。
故人を偲び、静かに身を慎んで過ごすべき喪中の期間には、こうした華やかな飾り付けはふさわしくないとされているためです。
特に神道では、死を「穢れ(けがれ)」として捉える考え方があり、神様をお迎えする神聖な場所に穢れを持ち込まないように、正月飾りや神社への初詣などを控えるのが慣わしとなっています。
喪中の期間に控えるべきこと
鏡餅だけでなく、門松、しめ飾り、おせち料理といったお祝いの準備も控えるのが一般的です。
年賀状を出す代わりに、事前に喪中はがきを送るのもこのためです。
ただし、お雑煮などでお餅を食べること自体は問題ありません。
ただし、これはあくまで一般的な考え方です。
仏教では神道ほど厳密に「穢れ」を意識しないため、故人の四十九日法要が終わった「忌明け」後であれば、ささやかにお正月を迎えても良いとする考え方もあります。
また、「故人が毎年お正月飾りを楽しみにしていたから」といった理由で、ご家族が納得した上で、内々で鏡餅を飾るケースも無いわけではありません。
どのように過ごすべきか迷った場合は、ご親族や菩提寺に一度相談してみることをお勧めします。
まとめ:鏡餅を仏壇に飾っても大丈夫?
この記事の重要ポイントをまとめます。
- 鏡餅を仏壇に飾ることは問題ない
- 仏教でも餅は仏飯に次ぐ重要なお供え物
- 神棚には歳神様のため、仏壇にはご先祖様のために飾る
- 神棚と仏壇の両方に飾るのが丁寧な形
- 仏壇に飾る際は高月などの仏具に乗せる
- 仏具の上には半紙を敷くとより良い
- 飾る個数に厳密なルールはない
- 仏壇の大きさに合わせて1つか一対を飾るのが一般的
- 大小2段重ねは福が重なるなどの意味がある
- お供え餅は仏事全般、鏡餅はお正月限定の飾り
- 飾る期間は松の内までが目安
- 1月11日の鏡開きで下げて家族でいただく
- 喪中の場合はお祝い事なので飾るのを控えるのが基本
- 忌明け後であれば良いとする考え方もある
- 迷った場合は家族や菩提寺に相談する