鏡餅は赤口に飾っても大丈夫?六曜や日付と縁起の関係性について
新年を迎える準備で慌ただしい中、古くからの日本の行事について「これで合っているのかな?」と疑問に思うことはありませんか。
年末の準備は多岐にわたり、一つ一つの慣習の背景や正しい意味をじっくり調べるのは大変ですよね。
特に、一年間の幸せを願って飾る鏡餅については、赤口や六曜との関係で日取りに迷い、「縁起が悪い日だったらどうしよう」と手が止まってしまう方もいらっしゃるかもしれません。
お正月の準備には、縁起を担ぐための慣習や様々な注意点が存在します。
この記事では、多くの方が悩みがちな鏡餅と赤口の関係性から、年神様をお迎えするのに最もふさわしい日取り、そして鏡餅の伝統的な飾り方や現代的な楽しみ方まで、分かりやすく丁寧に解説していきます。
最後までお読みいただければ、日本の文化への理解が深まり、自信を持って新年を迎える準備を整えることができるでしょう。
- 赤口に鏡餅を飾ることの是非
- 六曜と日本の伝統行事の基本的な関係
- 鏡餅を飾るのに最適な日と避けるべき日
- 鏡餅の正しい飾り方と様々な注意点
鏡餅は赤口に飾っても大丈夫?
鏡餅を赤口に飾っても問題はない?
結論から申し上げますと、鏡餅を赤口に飾ることは全く問題ありません。
赤口(しゃっこう、または「しゃっく」とも)は六曜の中で「凶日」とされ、お祝い事を避けるべきだと考える方もいますが、これは主に特定のことに関連する迷信です。
この日は陰陽道に由来する「赤舌日(しゃくぜつにち)」にあたり、羅刹神(らせつしん)という鬼が人々を悩ませる日とされました。
そして、「赤」という字が火や血といった災いを連想させるため、特に火事や刃物、つまり怪我に注意すべき日とされてきました。
契約ごとや訴訟といった争いごとにも向かないと言われています。
しかし、鏡餅を飾るという行為は、火や刃物とは直接関係がなく、争いごとでもありません。
したがって、過度に心配する必要はないのです。
むしろ、赤口には午前11時頃から午後1時頃までの「午の刻」だけは吉とされています。
この時間帯は、人々を悩ます鬼でさえも休憩を取るとされ、事を起こすのに良い時間だと考えられているのです。
もし六曜を気にして日取りを選ぶのであれば、この吉の時間帯に飾るのがおすすめです。
赤口に鏡餅を飾る際のポイント
- 基本的には飾っても問題ない
- 火や刃物、争いごとに関連するお祝いではないため
- もし気になる場合は、鬼も休むとされる吉の時間「午の刻(午前11時~午後1時)」に飾るのが良い
六曜は実は神道や仏教とは無関係
大安や仏滅、赤口といった「六曜(ろくよう)」は、日本の生活に深く根付いているため、神道や仏教といった伝統的な宗教に由来するものだと考えられがちです。
しかし、実は六曜は神道や仏教とは直接的な関係が一切ありません。
六曜の起源は14世紀ごろの中国にあり、当初は時刻の吉凶を占うものでした。
日本には鎌倉時代から室町時代にかけて伝来し、江戸時代末期から明治時代にかけて、日の吉凶を占うものとして民間の暦に記載されるようになり、庶民の間に爆発的に広まったのです。
そのため、「仏滅」という漢字も元々は「物事が空しく滅する」という意味の「物滅」が、時代の流れで「仏」の字に変わったと言われており、仏教の教えとは無関係です。
豆知識:神社の公式見解
六曜はあくまでその日の運勢を占うための民間信仰・占術の一つです。
日本の神社を包括する組織である神社本庁の公式サイトでも、「『大安』や『仏滅』などの『六曜』は、中国で生まれた易学をもとにした民間の暦で、神道とは全く関係ありません」とはっきりと解説されています。
宗教的な教えとして六曜に基づいて行動する必要はないのです。
ただ、現在の日本では冠婚葬祭の日取りを決める際に広く参考にされており、一種の社会的な慣習として生活に根付いています。
そのため、科学的根拠がないと一蹴するよりも、「縁起を担ぐ」という日本らしい文化的な側面として柔軟に捉えるのが良いでしょう。
以下に六曜の基本的な意味をまとめました。
日取り決めの参考にしてください。
六曜 | 読み方 | 意味 |
---|---|---|
先勝 | せんしょう・さきがち | 午前は吉、午後は凶。急ぐことが良いとされます。 |
友引 | ともびき | 朝晩は吉、昼は凶。祝い事は良いですが、葬儀は避けます。「幸せを友に引く」という意味で慶事には好まれます。 |
先負 | せんぶ・さきまけ | 午前は凶、午後は吉。何事も急がず、静かに待つのが良いとされます。 |
仏滅 | ぶつめつ | 一日を通して凶。祝い事は避けられることが多いですが、「物が滅び新たに始まる」と解釈されることもあります。 |
大安 | たいあん | 一日を通して大吉。「大いに安し」の意味で、全てのことに良いとされます。 |
赤口 | しゃっこう・せきぐち | 昼(午前11時頃~午後1時頃)のみ吉、他は凶とされます。火や刃物に注意すべき日とされます。 |
鏡餅を飾る時に避けた方がいい日は?
鏡餅を飾る日取りには、古くから縁起が悪いとされ、避けるべき日付が明確に存在します。
六曜を気にする以上に、こちらの慣習は広く知られているため、覚えておくと良いでしょう。
特に注意が必要なのは、年末の12月29日と12月31日です。
12月29日:「二重苦」を連想させる日
29日の「九」が「苦しむ」を連想させるため、「二重苦」として縁起が悪い日とされています。
新しい年の福を招いてくださる年神様をお迎えする準備として、苦しみを連想させる日は避けるのが古くからの慣習です。
ただし、一部の地域では「29」を「ふく(福)」と読み、「福餅」として縁起が良いとする考え方もありますが、全国的には避ける傾向が強い日です。
12月31日:「一夜飾り」となり失礼にあたる日
大晦日である31日に慌てて飾ることは「一夜飾り」と呼ばれ、年神様に対して誠意に欠ける失礼な行為とされています。
また、お葬式の準備が通夜から葬儀まで一夜で行われることを連想させるため、不祝儀を連想させ縁起が悪いとも言われています。
年神様は元旦に家々を訪れると考えられているため、その前日に急ごしらえで準備をするのは、歓迎の気持ちが薄いと捉えられてしまうのです。
心を込めてお迎えするという観点からも、余裕を持った準備が望ましいですね。
避けるべき日付とその理由
- 12月29日:「九」が「苦」に通じ、「二重苦」を連想させるため。
- 12月31日:「一夜飾り」となり、神様に対して誠意がなく、失礼にあたるため。
鏡餅を飾るのに縁起が良い日はある?
では、鏡餅を飾るのに最も良い日はいつなのでしょうか。
避けるべき日がある一方で、もちろん推奨される縁起の良い日も存在します。
一般的に、最も縁起が良いとされているのは12月28日です。
最大の理由は、漢数字の「八」がその形から「末広がり」を意味し、未来への繁栄や発展を象徴する大変縁起の良い数字とされているためです。
扇子や富士山のように、下がどっしりと安定し、先が広がっていく形は、日本では古くから吉祥の象徴とされてきました。
この日に鏡餅を飾ることで、新しい年が幸多き、豊かな一年になるようにとの願いを込めることができます。
もし28日の都合がつかない場合は、12月30日に飾るのも良い選択です。
30日はキリの良い数字であり、避けるべき29日と31日の間にあることから、問題のない日とされています。
大晦日を慌ただしく過ごすことなく、落ち着いて準備ができるという点でも合理的です。
鏡餅を飾るのに最適な日まとめ
- 最良の日:12月28日(末広がりの「八」で縁起が良く、最も推奨される)
- 次善の日:12月30日(キリが良く、一夜飾りにもならないため問題ない)
多くの方が年末休暇に入るタイミングでもありますので、クリスマスが終わったら大掃除を進め、28日を目安に鏡餅を飾る、というスケジュールを立てるとスムーズに進められますね。
鏡餅を年明けや正月に飾るのは良くないこと?
鏡餅を飾るタイミングとして、年が明けてから、つまり元旦(1月1日)以降に飾るのは避けるべきとされています。
これは前述の「一夜飾り」の考え方とも関連します。
鏡餅をはじめとする正月飾りは、新しい年の福をもたらす「年神様」をお迎えするための大切な準備であり、年神様への目印でもあります。
年神様は元旦の朝に各家庭へやってくると考えられているため、元旦を過ぎてから飾り始めるのは、お客様が到着してから慌ててお迎えの準備を始めるようなものであり、神様に対して大変失礼にあたります。
これは、お迎えする気持ちがない、歓迎していない、と受け取られかねません。
年神様が滞在される期間は「松の内」と呼ばれ、一般的に関東では1月7日まで、関西では1月15日までとされています。
この期間、気持ちよく過ごしていただくためにも、正月飾りは年神様がいらっしゃる前に、余裕をもって準備を整えておくのが古くからのマナーとされています。
鏡餅は赤口に飾っても問題ない?
鏡餅はいつから飾るもの?早い時期でもOK?
お正月の準備を始める「正月事始め」という日は、一般的に12月13日とされています。
この日は、かつて江戸城で一年の汚れを払い清める「煤払い(すすはらい)」が行われたことに由来し、この日を境に庶民も正月の準備を始めるのが習わしでした。
そのため、この12月13日以降であれば、いつから鏡餅を飾っても問題はなく、決して早すぎるということはありません。
しかし、現代の生活ではクリスマスという大きなイベントがあり、多くの家庭ではツリーなどが飾られているため、それが終わる12月25日以降に飾り始めるのが一般的です。
早く飾る場合の注意点
本物のお餅で作られた鏡餅の場合、あまりにも早くから飾ってしまうと、鏡開きの日(一般的には1月11日)までに乾燥でひび割れがひどくなったり、暖房の効いた現代の住宅環境ではカビが生えてしまったりする可能性があります。
こうした実用的な面と現代の生活習慣を考慮すると、クリスマス後から縁起の良い28日にかけての期間、つまり12月26日〜28日ごろに飾り始めるのが最も合理的で一般的と言えるでしょう。
鏡餅を置いてはいけない場所はある?
鏡餅は、年神様がやってきて宿る「依り代(よりしろ)」としての重要な役割があるため、家の中でも特に重要で神聖な場所に飾るのが良いとされています。
伝統的には、家の中で最も神聖な場所である神棚や、お客様をもてなす最も格式高い場所である床の間がその場所とされてきました。
現代の住宅ではこれらがないご家庭も多いため、その場合は家族が最も長く過ごし団らんの中心となるリビングや、新しい福を迎え入れる家の顔である玄関などが飾る場所にふさわしいでしょう。
キッチンや書斎、子供部屋などに少し小さな鏡餅を飾り、それぞれの場所に宿る神様への感謝を示すのも良い習慣です。
一方で、「玄関は家の格としては下座にあたる」「トイレは不浄な場所」という考えから、これらの場所に飾るべきではないという説もあります。
しかし、これも絶対的なルールではありません。
「トイレにも神様(厠神)がいる」と考え、その神様への感謝を込めて小さな鏡餅を飾る風習を持つ地域もあります。
最も大切なのは、特定の場所にこだわることよりも、その場所をきれいに掃除し、清浄な空間を保つことです。
年神様は清らかな場所を好まれるとされています。
年末の大掃除をしっかりと行い、年神様への感謝と敬意を払って、気持ちよく滞在していただける一番ふさわしい場所を家の中に作ってあげましょう。
鏡餅を飾るのに適した時間帯はあるの?
鏡餅を飾る時間帯については、特に厳格な決まりはありません。
ご家庭の都合に合わせて、落ち着いて準備できる時間を選べば問題ありません。
しかし、一般的には大掃除を済ませた後、午前中から日中の明るい時間帯に飾るのが良いとされています。
その理由として、夜に飾ることを直接的に禁じるルールはないものの、一日の始まりである午前中の清々しい空気の中で準備をすることで、新しい年神様をより晴れやかな気持ちでお迎えできるという点が挙げられます。
また、夜に準備をすると、どうしても慌ただしくなりがちで、「一夜飾り」のように神様への誠意が欠けていると見なされる可能性もゼロではありません。
前述の通り、もし六曜の縁起を担ぎたい場合は、赤口であれば吉時とされる「午前11時頃から午後1時頃」に、また先勝であれば「午前中」に飾るなど、それぞれの六曜の意味に合わせて時間を選ぶのも一つの方法です。
ご自身の気持ちが最も晴れやかになる時間帯を選んで、心を込めて飾り付けたいものですね。
去年の鏡餅を使い回しても問題ない?
鏡餅を翌年以降も使い回して良いかどうかは、その鏡餅が「本物のお餅」でできているか、「置物やレプリカ」かによって明確に答えが異なります。
本物のお餅の場合
本物のお餅でできた鏡餅の使い回しは、衛生的な観点からも、縁起の面からも絶対にNGです。
門松やしめ縄などのお正月飾りは、その年の年神様をお迎えするために、毎年新しく清浄なものを用意するのが基本です。
古い年の厄を払い、新しい年の福徳をまっさらな状態で迎えるという意味でも、使い回しは年神様に対して大変失礼にあたると考えられています。
また、一年間飾ったお餅は、見た目がきれいでも品質が劣化しているため、食べることはできません。
置物やレプリカの場合
木やガラス、プラスチックなどで作られた置物(オブジェ)タイプの鏡餅は、毎年きれいに手入れをすれば、使い回しても全く問題ありません。
これらは神様へのお供え物という厳密な意味合いよりも、お正月の季節感や雰囲気を楽しむための「インテリア」としての側面が強いからです。
お正月が終わったら、柔らかい布でほこりを丁寧に拭き取り、湿気の少ない場所に大切に保管して、翌年も飾りましょう。
注意:レプリカの中のお餅は要確認!
プラスチック製の鏡餅の中には、真空パックされた切り餅や丸餅が入っている製品がよくあります。
このお餅には当然賞味期限が設定されていますので、毎年飾る前に確認し、期限が切れていれば新しいものと交換しましょう。
容器だけを再利用し、中のお餅は鏡開きの際に美味しくいただき、翌年は新しいお餅を用意するのが正しい扱い方です。
鏡餅は置物やレプリカを使ってもいいの?
近年、伝統的なお餅の鏡餅と並んで、木やガラス、陶器、ちりめん細工などで作られた置物や、プラスチック製の容器に切り餅が入ったレプリカタイプの鏡餅も多く見られます。
こうした現代的な鏡餅を使っても良いのか迷う方もいるかもしれませんが、結論としては、置物やレプリカを使用しても全く問題ありません。
お正月行事で最も大切なのは、年神様をお迎えし、新しい一年の家族の健康や幸せを願う「気持ち」です。
現代のライフスタイルや住宅事情に合わせて、各家庭で取り入れやすい形で伝統行事を楽しむことが、文化を未来につなげていく上でとても重要になります。
実際に、日本の大切な食文化としての鏡餅について、大手米菓メーカーである越後製菓の公式サイト「お鏡もち大百科」では、鏡餅が年神様へのお供え物であり、年神様が宿る「依り代」でもあることが詳しく解説されています。
こうした本来の意味を理解しつつも、形は現代に合わせて柔軟に考えるのが良いでしょう。
置物・レプリカのメリットとデメリット
【メリット】
- カビの心配がなく、衛生的で手軽に扱える
- 毎年繰り返し使えるため経済的で環境にも優しい
- インテリアに合わせたおしゃれでモダンなデザインを選べる
- アレルギーの心配がある家庭でも安心
- 準備や片付けが非常に簡単
【デメリット】
- 鏡開きでお餅を割って食べるという伝統的な体験ができない
- 年神様の力が宿ったお餅をいただくことでご利益を得る、という本来の意味合いは薄れる
お餅を食べる習慣がないご家庭や、アレルギーの心配がある場合、また手軽にお正月の雰囲気を楽しみたい場合には、こうした現代的な鏡餅を上手に活用するのがおすすめです。
大切なのは、形式よりも心を込めて新年を祝うことです。
鏡餅は赤口に飾っても大丈夫?まとめ
この記事の重要ポイントをまとめます。
- 鏡餅を赤口に飾ることは基本的に問題ない
- 赤口に飾るなら鬼が休む吉時の午前11時から午後1時が良いとされる
- 六曜は神道や仏教とは関係のない中国由来の民間信仰である
- 鏡餅を飾るのを避けるべき日は「二重苦」の12月29日と「一夜飾り」の12月31日
- 鏡餅を飾るのに最も縁起が良いとされる日は「末広がり」の12月28日
- 28日が難しい場合はキリの良い12月30日も良い日とされる
- 飾る時期は「正月事始め」の12月13日以降ならいつでも問題ない
- 現代ではクリスマス後の12月26日から28日に飾ることが多い
- 飾る場所は神棚や床の間が伝統的だが、リビングや玄関など清浄な場所なら良い
- 場所そのものより、きれいに掃除をして清浄に保つことが最も重要
- 飾る時間帯に厳格な決まりはなく、午前中から日中の明るい時間帯が一般的
- 本物のお餅でできた鏡餅を翌年に使い回すのはNG
- 木やガラス、プラスチックなどで作られた置物やレプリカは毎年使い回しても良い
- 置物やレプリカを使う場合でも、年神様への感謝の気持ちが最も大切
- ライフスタイルに合わせて、無理なく伝統行事を楽しむことが文化の継承につながる