鏡餅を台所に飾る場合の置き場所は?神様へお供えする際の注意点

お正月の準備で鏡餅を飾る際、特に台所の場所に迷っていませんか?
鏡餅は、新しい年の年神様(歳神様ともいいます)をお迎えするための、非常に大切な縁起物です。
単なる飾りではなく、神様が宿る依り代(よりしろ)としての役割があり、その歴史は平安時代まで遡るとも言われています。
神様をお迎えする上で、鏡餅を飾る場所はとても重要になります。
中でも、私たちの生活と健康を支える家庭の火や水を司る台所は、古くから神聖な場所とされてきました。
しかし、日常的に使う空間だからこそ「どこに置けば失礼にならないだろう?」と悩む方も少なくありません。
この記事では、「鏡餅を台所に飾る場所はどこがいいの?」という疑問を持つあなたへ、伝統的な意味合いから現代の住宅事情に合わせた飾り方まで、分かりやすく丁寧に解説します。
- 台所に鏡餅を飾るのに適した場所
- 鏡餅を台所に飾る際に避けるべき場所
- 台所以外に鏡餅を飾るおすすめの場所
- マンションでの鏡餅の飾り方に関する注意点
鏡餅を台所に飾る場合の置き場所は?
鏡餅を台所に飾る場合の置き場所はどこがいい?
結論から言うと、台所に鏡餅を飾ることは、家内安全や家族の健康を願う上で非常に良いこととされています。
古くから台所は、日々の食事を支える「火」と生活に不可欠な「水」を扱う、家の中でも特に重要な場所と考えられてきました。
そのため、それぞれの場所に宿るとされる神様へ日頃の感謝を伝え、新年のご加護を祈るために鏡餅をお供えする風習が根付いています。
火の神様(竈神・荒神)のために
昔の日本家屋では「かまど」が台所の中心であり、そこには火の神様である「竈神(かまどがみ)」や、猛々しい力を持つとされる「荒神(こうじん)」が祀られていました。
火は人々の食生活を豊かにする恵みであると同時に、一度扱いを間違えれば全てを奪う火災にも繋がるため、人々は畏敬の念を持って火の神様に安全を祈願してきました。
現代の家庭では、ガスコンロの近くやキッチンのコンロ周りが、この神聖な場所にあたります。
火元に鏡餅を飾ることで、一年間の火の安全と、食事が豊かであることへの感謝を示します。
ポイント:三段重ねの鏡餅
関西地方や一部の地域では、台所の火の神様へのお供えとして、お餅を三段に重ねた鏡餅を飾る特別な風習があります。
これは、私たちの生活の根幹である「食」と、それを支える「火」をいかに大切にしていたかの名残と考えられています。
(出典:前原製粉株式会社 義士「二段のものと、三段のものはどのように違うのでしょうか?」)
水の神様(水神)のために
同様に、かつて家庭の水を一手に担っていた井戸や水汲み場には、水の神様である「水神(すいじん)」が祀られていました。
水は生命維持に欠かせないだけでなく、物を洗い清める役割も持つ神聖なものです。
その恵みに感謝し、一年間枯れることなく良質な水を使えるようにと願いを込めて鏡餅をお供えします。
現代の家庭では、キッチンのシンク周りや洗面所がこの場所にあたります。
火や水を扱う場所に鏡餅を飾ることで、その年の災いを避け、家族が健康で安全に暮らせるようにと願いを込めるのですね。
毎日の生活を支えてくれる場所への感謝を示す、とても大切な習慣と言えます。
台所に置く際に避けたい場所はある?
鏡餅は年神様が宿る神聖な依り代(よりしろ)です。
そのため、台所に飾る際には、神様に対して失礼にあたらないよう、避けるべき場所がいくつかあります。
最も大切なのは、不浄な場所や騒がしい場所を避けるということです。
年神様に気持ちよく滞在していただくためにも、常に清潔で静かな、落ち着いた場所を選びましょう。
注意:台所で避けたい場所の例
- ゴミ箱の近く:不浄な気が溜まりやすいとされるため、神様をお迎えするのにふさわしくありません。
生ゴミの臭いなどもってのほかです。
- 電子レンジや冷蔵庫の上:モーター音や電磁波が常時発生する場所は「騒がしい場所」とされ、神様が落ち着けないと考えられています。
また、冷蔵庫の上は熱がこもりやすく、お餅が傷む原因にもなり得るので避けましょう。
- 床への直置き:神様を見下すことになり大変失礼にあたります。
また、人々が歩く場所で埃も立ちやすいため、衛生面からも絶対に避けてください。
必ず三方やお盆などの上に乗せて、少し高い場所に飾りましょう。
- 水しぶきや油が直接かかる場所:コンロの真横やシンクのすぐそばなど、調理中に汚れが飛び散りやすい場所は、お供え物を汚してしまい失礼にあたります。
カビの原因にもなるため、衛生面からも避けるのが賢明です。
これらの場所を避け、綺麗に掃除したキッチンカウンターの上や、普段あまり物を置かない清潔な棚の上など、少し高い位置に飾るのがおすすめです。
鏡餅で方角とかは気にした方がいい?
鏡餅を飾る方角について、現在では「絶対にこの方角でなければならない」という厳格な決まりはありません。
しかし、古くからの習わしを大切にし、より丁寧にお迎えしたい場合は、いくつかの考え方があります。
最も伝統的な考え方として、その年の縁起の良い方角である「恵方(えほう)」に向けてお供えする方法があります。
昔は、恵方に向けて鏡餅を飾れるように、置き場の角度を回転させることができる特別な箪笥も存在したようです。
恵方を調べるのが難しい場合は、一般的に縁起が良いとされる南向き、または東向きに飾るのが良いとされています。
これは、太陽が昇り万物が活動を始める方角である東や、日当たりが良く「陽」の気が満ちる南が、神様をお迎えするのにふさわしいと考えられているためです。
豆知識:恵方とは?
恵方とは、その年の福徳を司る「歳徳神(としとくじん)」という女神様がいる方角のことです。
その方角に向かって事を行えば万事に吉とされており、節分に恵方巻を食べる風習で広く知られていますが、元々はお正月の行事にも深く関わっていました。
ただ、現代の住宅事情では方角を選べないことも多いため、最も重要なのは方角にこだわりすぎることよりも、家族が集まる場所や、きれいに整えられた場所に感謝の気持ちを込めてお供えすることです。
家の中心となるリビングや、清浄な場所に心を込めて飾れば、年神様はきっと喜んでくださるでしょう。
鏡餅を台所に置く際の場所はどこがいい?
台所以外で鏡餅を飾る場所は?
鏡餅は、年神様が家の中の様々な場所に分霊されるという考えから、1つに限らず複数お供えしても良いとされています。
「日本鏡餅組合」のウェブサイトでも紹介されているように、年神様の力が隅々まで行き渡るよう、家の中の大切な場所それぞれにお供えするのが望ましいとされています。
台所以外では、家の中心となる場所や、年神様に来ていただきたい大切な場所にお供えするのが一般的です。
| 飾る場所 | 意味・理由 | 補足 |
|---|---|---|
| 床の間 | 家の中で最も格式の高い場所であり、神様が降臨する「神座」としての意味合いがあります。 一番大きくて立派な鏡餅を飾るのに最適です。 | お客様をお迎えする場所であり、年神様をお迎えする家の中心地とされます。 掛け軸や生け花とともに、厳かにお飾りします。 |
| 神棚・仏壇 | 神様やご先祖様へ日頃の感謝を伝え、新年のご加護を祈る場所です。 床の間がある場合は、それより少し小さいものを飾ります。 | 神棚には神様へ、仏壇にはご先祖様への新年のご挨拶としてお供えします。 |
| リビング | 床の間がない現代の住宅において、家族が集まる団らんの中心地です。 家の「顔」ともいえる場所にメインの鏡餅を飾ります。 | テレビの上など騒がしい場所は避け、サイドボードや飾り棚など、少し高く落ち着いた場所に飾りましょう。 |
| 寝室・書斎・子供部屋 | それぞれの部屋に宿り、そこにいる人を守るとされる「納戸神(なんどがみ)」のためにお供えします。 | 一年の健康や安眠、仕事の成功、学業成就などを願って、それぞれの部屋に小さな鏡餅を飾ります。 |
トイレや玄関には置かない方がいいの?
「トイレや玄関に鏡餅を飾っても良いのか?」という点は、古くからの慣習の中で意見が分かれるところであり、一概に「これが正解」とは言えません。
それぞれの考え方を知り、ご自身の家庭に合った方法を選ぶことが大切です。
飾らない方が良いとする考え方
一つの考え方として、玄関は家の外と内をつなぎ、履物を置く「下座(げざ)」にあたる場所、そしてトイレは排泄を行う「不浄な場所」とされるため、神聖な鏡餅を飾るのにはふさわしくない、というものがあります。
特に格式を重んじる家庭や地域では、この考え方が今でも大切にされています。
飾っても良いとする考え方
一方で、むしろ年神様が宿ることでその場所が清められるという、逆の考え方も広く受け入れられています。
古来より、日本人は家の中のあらゆる場所に神様は宿ると信じてきました。
しめ縄を飾った玄関は、それ自体が不浄なものを祓う「神聖な結界」であり、その内側はすでに清められた神域であると解釈できます。
各場所に宿る神様
- トイレ:古くから安産や婦人病の快癒、健康にご利益のある「厠神(かわやがみ)」が宿るとされています。
- 玄関:家の入口を守り、良い気を招き入れる重要な場所です。
特にトイレは家族の健康を司る重要な場所として、小さな鏡餅をお供えし、一年間の無病息災を願う風習は各地で見られます。
どちらが正解というわけではありません。
ご自身の考えや、お住まいの地域の風習に合わせて判断するのが良いでしょう。
もし飾ることに抵抗がなければ、それぞれの場所を守ってくださる神様への感謝の気持ちを示す良い機会になります。
大切なのは、それぞれの場所への感謝の気持ちです。
鏡餅を飾る場所はマンションだとどうなる?
マンションにお住まいの場合、床の間や広い玄関がないことも多いでしょう。
その場合は、現代のライフスタイルに合わせて飾る場所を柔軟に考えて全く問題ありません。
メインの鏡餅は、家族が最も多くの時間を過ごすリビングの飾り棚やサイドボードの上などが、年神様をお迎えするのに最もふさわしい場所と言えるでしょう。
玄関に飾る場合は、作り付けのシューズボックスの上が一般的です。
最近では、インテリアに馴染むようデザインされたコンパクトな木製やガラス製の鏡餅飾りも人気があります。
こうした現代的なお飾りは場所を取らず、洋風のリビングにも自然に溶け込むため、マンションでの正月飾りとして非常におすすめです。
注意:マンションの共用部分と管理規約
注意したいのが、玄関ドアの外側にしめ縄や正月飾りを飾る場合です。
玄関ドアの外側や廊下は「共用部分」にあたり、マンションの管理規約で個人の所有物を置くことや装飾を施すことが禁止されている場合があります。
これは、マンション全体の美観を損なわないためや、災害時の避難経路を確保するためです。
後々のトラブルを避けるためにも、飾る前に一度管理規約を確認するか、念のため玄関ドアの内側に飾るようにすると安心です。
鏡餅を台所に飾る場合の置き場所は?まとめ
この記事では、鏡餅を台所に飾る場所から、家の中の様々な場所での飾り方、そして現代の住宅事情に合わせた注意点まで、幅広く解説しました。
日本の伝統文化である鏡餅の飾り方には、一つひとつに深い意味が込められています。
最後に、この記事の要点をリスト形式でまとめますので、新年を迎える準備の参考にしてください。
- 鏡餅は新年を司る年神様の依り代となる大切なお供え物
- 台所では火の神様や水の神様への感謝を込めて飾る
- ガスコンロ周りやシンク周りが台所での主な設置場所
- 不浄な場所や騒がしい場所、床への直置きは避ける
- 方角は恵方や南・東向きが良いとされるが厳格な決まりはない
- 台所以外では床の間や神棚、家族が集まるリビングが最適
- 寝室や書斎など各部屋に小さな鏡餅をお供えするのも良い
- トイレや玄関に飾るか否かは地域や家庭の考え方による
- トイレには健康を司る厠神が宿るとされる
- 玄関はしめ縄の内側は神聖な場所という考え方もある
- マンションではリビングの棚やシューズボックスの上が一般的
- 玄関ドアの外側に飾る際は管理規約の確認が必要
- 飾る場所よりも感謝の気持ちを込めることが最も大切
- 正しい飾り方で年神様をお迎えし良い新年をスタートさせる
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