鏡餅はなぜ2段なのか?重ねられた意味や願い&3段以上の有無について

お正月の飾りとしておなじみの鏡餅ですが、なぜ2段に重ねられているのか、その意味をご存知でしょうか。
毎年飾っていても、その由来について深く考える機会は少ないかもしれません。
また、2段以外の鏡餅も存在するのか、気になっている方もいるでしょう。
この記事では、鏡餅が2段である理由や、それにまつわる様々な疑問について詳しく解説していきます。
- 鏡餅を2段に重ねる具体的な意味
- 鏡餅の名前や形に関する由来
- 鏡餅に飾る「みかん(橙)」などの意味
- 鏡餅が神様の依り代とされる理由
鏡餅はなぜ2段なのか?
鏡餅はなぜ2段?どんな意味がある?
鏡餅が2段に重ねられているのは、縁起の良い願いを込めているためです。
このスタイルが定着したのには、いくつかの説が重なっています。
主な理由として、大小2つのお餅で「月(陰)」と「日(陽)」を表しているという説が挙げられます。
陰と陽を重ね合わせることには、福徳(幸福と財産)が重なることや、円満に歳を重ねるという意味が込められているのです。
そもそも鏡餅の丸い形自体が「円満」を象徴しています。
その円満なお餅を二つ重ねることで、「円満に年を重ねる」「良い年を重ねる」という、新年への強い願いを表現していると言えます。
単に重ねているだけでなく、「福が重なる」「円満に歳を重ねる」といった、新年へのポジティブな願いが込められているのですね。
「重ねる」という行為そのものに、縁起の良さが託されています。
2段以外の鏡餅は存在するの?
はい、地域や飾る場所によっては3段の鏡餅も存在します。
私たちがよく目にするのは2段重ねですが、これが唯一の形というわけではありません。
例えば、3段の鏡餅は「荒神様(こうじんさま)」と呼ばれる、竈(かまど)など火の神様にお供えするものとして用いられることがあります。
前原製粉株式会社 義士のQ&Aによると、台所は「食」を司る家の中でも最も重要な場所の一つであり、そこを守る火の神様を大切にするために、特別な3段重ねが用いられたとされています。
また、京都の一部の旧家などでは、床の間に3段重ねの鏡餅を飾る風習もあったようです。
注意点
ただし、現在私たちがスーパーなどで一般的に目にする鏡餅の多くは2段重ねです。
これは、2段重ねが持つ「福が重なる」といった縁起の良さが、広く浸透しているためと考えられます。
さらに、京都の西陣では十二支に餅を供える「正月餅」という伝統行事があり、丸めた餅の上に小さな塊をつけた「星つきさん」と呼ばれる正月餅を、仕事場やお風呂やトイレなどの生活をするために大切な場所にお供えする家もあります。
このように、鏡餅の形は地域や風習によって多様性があるのです。
鏡餅はなぜ「鏡」という字を使うのか?
鏡餅という名前は、その形が昔の「鏡」に似ていることに由来しています。
昔の鏡は、現代の私たちが使うガラス製のものではなく、青銅製の丸い形をしていました。
この丸い鏡(神鏡)は、神様が宿る神聖なもの、あるいは神様との関わりが深い神聖なものとして、古くから考えられていたのです。
博物館明治村の記事「メイジノオト」によれば、昔の鏡は光を反射して太陽のように光るため、日本神話で太陽の神様とされる天照大神に見立てられ、御神体として祀られることもあったとされています。
日本神話に登場する三種の神器の一つにも「八咫鏡(やたかがみ)」があるように、鏡は非常に重要視されていました。
そのため、神様へのお供え物である丸いお餅を、この神聖な鏡に見立てて「鏡餅」と呼ぶようになったと伝えられています。
豆知識:名前の他の説
名前の由来には諸説あります。
人の魂がこもる「心臓」を模しているという説や、鏡餅の「鏡」は「鑑みる(かんがみる)」、つまり良い手本や規範に照らして考えるという意味の言葉に由来するという説もあります。
鏡餅はなぜ「餅」であるのか?
お餅は、日本人にとって古くから神聖で特別な食べ物であったため、神様へのお供え物として用いられています。
お餅の原料であるお米には、一粒一粒に神様が宿っているという言い伝えがあります。
日本人は古くから、稲には霊魂(稲魂)が宿るという信仰を持っていました。
その大切な稲(お米)から作られるお餅は、さらに強い力が宿る神聖な食べ物として、古来より親しまれてきたのです。
また、お餅は昔、お正月やお祭り、伝統行事といった特別な「ハレの日」に食べるものでした。
普段の「ケ」の日の食べ物とは区別されていたのです。
神仏に供え、皆でお祝いして食べるものだったのです。
お正月は、まさにその代表的なハレの日と言えます。
お米の神様が宿るお餅だからこそ、新年の神様である「年神様」をお迎えするお供え物として最適だったのですね。
鏡餅はなぜ2段になっている?
鏡餅にはなぜみかんを乗せる?その意味は?
鏡餅の上に乗っているあの柑橘類は、実はみかんではなく「橙(だいだい)」という果物が本来の形です。
橙を乗せる最大の理由は、「だいだい」という名前が「代々(だいだい)」という言葉に通じるためです。
これには、家が「代々」繁栄し、子孫が続いていくようにという、子孫繁栄の願いが込められています。
また、橙は縁起が良いとされる特徴を持っています。
実が熟しても木から落ちにくく、収穫しなければ一つの木に新旧の世代の実が同時になることもあります。
中には2〜3年も枝に残っていることがあるほどです。
この様子が、長寿や一家繁栄の象徴とされました。
補足:みかんを代用する理由
現在では、橙そのものが手に入りにくいことや、鏡餅全体のサイズ感に合わせて、見た目が似ている「みかん」で代用されることも多くなっています。
みかんも「かんきつ」の「きつ」が「吉」に通じるため、縁起が良いとされています。
また、北海道など橙が手に入りにくい地域では、みかんの代わりに「金柑(きんかん)」を乗せることもあるようです。
鏡餅の飾りにはそれぞれどんな意味がある?
鏡餅には、橙(またはみかん)以外にも、様々な飾りが使われます。
それら一つひとつに、縁起の良い意味が込められています。
鏡餅は、これらの飾りが組み合わさることで、新年への豊かな祈りを表現する一つの完成形となるのです。
代表的な飾りの意味を、以下の表にまとめます。
| 飾り | 意味・由来 |
|---|---|
| 裏白(うらじろ) | シダ植物の一種です。 葉の裏が白いことから「清廉潔白」や「心の清らかさ」を表します。 また、葉が左右対称(対)になって美しく生える様子から「夫婦円満」や、葉がしだれる様子から「白髪になるまで長生きするように」という長寿の願いも込められています。 |
| ゆずり葉 | 春に新しい葉が生えそろってから、古い葉が場所を譲るように落ちていく特徴があります。 この世代交代の様子を、親から子へ家が受け継がれていくことになぞらえ、「子孫繁栄」を願う飾りとされています。 |
| 御幣(ごへい) | 赤と白の紙を組み合わせた飾りです。 赤は「魔除け」、白は「清らかさ」や「繁栄」を意味すると言われます。 四方に手を広げているように見える形から、繁栄を願う意味もあります。 |
| 四方紅(しほうべに) | 鏡餅の下に敷く、四方を赤く縁取った紙のことです。 これは天地四方(東西南北)からの災いを払い、一年の繁栄を祈るという意味があります。 |
| 串柿(くしがき) | 干し柿を串に刺したものです。 柿は「嘉来(かき)」、つまり「喜びが来る」という当て字や、「幸せをかき集める」という意味に通じる縁起物です。 京都の伝統的な飾り方では、串に2個・6個・2個の合計10個を刺し、「いつもニコニコ(2個2個)、仲睦(6つ)まじく」という願いが込められることもあります。 |
| 昆布(こぶ) | 「よろこぶ」という言葉に通じるため、縁起物として飾られます。 また、「子生婦(こぶ)」と当て字をして「子孫繁栄」を願ったり、古くは「広布(ひろめ)」と呼ばれていたことから「喜びをひろめる」という意味も持ちます。 |
豆知識:三種の神器に見立てる説
これらの飾り全体で、日本神話の「三種の神器」を表しているという説もあります。
鏡餅は「八咫鏡(やたかがみ)」、橙は「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」、そして串柿は「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」に見立てられているという見方です。
鏡餅は神様が座るとされる「依り代」
鏡餅は、お正月に各家庭を訪れる「年神様(としがみさま)」が滞在するための「依り代(よりしろ)」と考えられています。
古くから、お正月には新年(とし)の神様が家々を訪れ、その年の幸福や豊作(五穀豊穣)をもたらしてくれると信じられてきました。
この年神様をお迎えするための一連の準備が、お正月飾りです。
- 門松:年神様が迷わず家に来てくれるための「目印」
- しめ縄:神聖な場所であることを示し、不浄なものが入らないようにする「結界」
- 鏡餅:年神様がやってきて、お正月期間中に滞在していただくための神聖な場所(居場所)
このように、鏡餅は単なるお供え物ではなく、神様が宿るための大切な居場所としての役割を持っているのです。
株式会社もちやの解説にもあるように、鏡餅は神様と人を仲介するものであり、神前に捧げた餅を分け合って食べることで祝福を受けるという文化の名残りです。
年神様が宿った鏡餅は、神様の魂(御魂)が宿ったものとされます。
このお餅を「鏡開き」の後に家族で分け合って食べることで、年神様の力を体に取り入れ、その年一年の健康や無病息災を願うのです。
お年玉の本当の由来
この年神様の魂が宿ったお餅を「歳魂(としだま)」と呼んだことが、現代の「お年玉」の語源になったと言われています。
家長が家族にこの「歳魂」を分け与えることがお年玉の始まりであり、もともとはお金ではなくお餅だったのです。
江戸時代頃から、お餅の代わりにお金が渡されるようになり、現代の形に変化していったとされています。
鏡餅はなぜ2段なのか?まとめ
鏡餅がなぜ2段なのか、その理由と関連する意味について解説しました。
お正月飾りとして何気なく見ていた鏡餅には、新年を迎えるための深い意味と、家族の幸せを願う多くの祈りが込められています。
この記事の要点を以下にまとめます。
- 鏡餅は新年に訪れる年神様の「依り代」です
- 鏡餅という名前は昔の丸い「鏡」に由来します
- お餅は神様の力が宿る神聖な食べ物とされます
- 鏡餅を2段に重ねるのには複数の意味があります
- 一つは「月(陰)」と「日(陽)」の表現です
- 陰陽を重ねることで「福徳が重なる」と願います
- また「円満に歳を重ねる」という意味も込められます
- 一般的には2段ですが3段の鏡餅も存在します
- 3段は火の神様(荒神様)にお供えする場合などです
- 上に乗せるのは「橙(だいだい)」が本来の形です
- 橙は「代々(だいだい)」の繁栄を願う縁起物です
- 現在は「みかん」で代用されることも多いです
- 裏白は「清廉潔白」や「夫婦円満」を意味します
- ゆずり葉は「子孫繁栄」の象徴です
- 鏡餅は年神様の魂が宿る「歳魂」とも呼ばれました
- これを分け与えたのが「お年玉」の始まりです
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