鏡餅はいつから販売される?店頭に並ぶ時期と実際に飾る日の目安
年末が近づくと、スーパーやデパートの店頭で鏡餅を見かける機会が増え、いよいよ新しい年が来るのだと実感しますよね。
日本の伝統的なお正月飾りである鏡餅ですが、いざ自宅で準備しようとすると、「一体いつから販売されているのだろう?」「どの日に、どんな場所に飾るのが正しい作法なのだろう?」といった、日にちや飾り方に関する様々な疑問が次々と浮かんでくるのではないでしょうか。
せっかくの新年を気持ちよく迎えるためにも、古くから伝わる習わしやその意味を正しく理解しておくことはとても大切です。
この記事では、鏡餅の販売時期から、縁起の良い飾り方、そして鏡開き後のいただき方まで、知っておきたいルールや知識を詳しく解説します。
- 鏡餅が店頭に並び始める具体的な時期と理由
- 縁起が良いとされる鏡餅を飾る日にちと避けるべき日
- 神棚や仏壇など、鏡餅を飾るのに適した場所と現代の考え方
- レプリカの是非や鏡開きなど、伝統的な飾り方に関するルールや注意点
鏡餅はいつから販売されるのか?
鏡餅はいつから販売される?
鏡餅の店頭販売は、多くのスーパーマーケットや量販店で11月上旬から始まることが珍しくありません。
「まだ年末まで時間があるのに早すぎる」と感じるかもしれませんが、これには小売店側の明確な販売戦略があります。
鏡餅は年に一度しか購入機会のない「際物(きわもの)商材」であり、顧客にいかに早く自店で購入してもらうかが重要になるためです。
特に、会社や個人事業主などが業務として飾る場合や、年末の多忙を避けて計画的に準備を進めたいと考える消費者層に向けて、早期の陳列が効果を発揮します。
実際には11月中に販売のピークが来るわけではありませんが、「あのお店に行けば鏡餅が手に入る」と顧客に早期から認識させておくことで、12月下旬の本格的な需要期に顧客を呼び込むための「仕込み期間」としての役割を担っているのです。
早期割引や多様な商品ラインナップ
店舗によっては、11月中の購入を対象とした「早期割引」を実施している場合もあります。
また、近年では伝統的なデザインだけでなく、「人気キャラクターをあしらった鏡餅」なども増えており、多様化するニーズに応えるために商品ラインナップが拡充されています。
年末の価格で買うよりもお得に、そして好みのデザインを選んで準備できる可能性があるため、早めに情報をチェックしてみるのも良いでしょう。
鏡餅はいつからいつまで飾るもの?
鏡餅を飾り始める時期は、一般的に「正月事始め」とされる12月13日以降であれば、いつでも問題ないとされています。
この日から、一年間に溜まった家の埃を払う「煤払い(すすはらい)」や、門松にする松を山へ取りに行く「松迎え」など、新年にお迎えする年神様(としがみさま)のための準備が本格的に始まります。
そして、飾っておいた鏡餅を家庭でいただく行事が「鏡開き」です。
鏡開きは、年神様が宿っていた鏡餅を家族で食べることで、その神聖な力を分けてもらい、新しい一年の一家一族の無病息災を願うという、非常に大切な意味を持つ行事です。
鏡開きを行う日には地域によって差がありますが、主に以下の日程が一般的です。
地域 | 鏡開きの日 | 備考 |
---|---|---|
関東・東北・九州など | 1月11日 | 現在最も一般的な日にちです。もともと武家では20日でしたが、三代将軍・徳川家光の月命日(20日)を避けるため、江戸幕府によって11日に改められたという歴史的背景があります。 |
関西地方 | 1月15日または20日 | 松の内(年神様がいらっしゃる期間)が15日までとされる地域が多く、それに伴い鏡開きも遅めになる傾向があります。江戸幕府の影響が少なかった地域では、古来の20日に行う風習が残っています。 |
京都府の一部 | 1月4日 | 他の地域に比べて非常に早いのが特徴で、三が日が明けてすぐに鏡開きを行う独自の慣習があります。 |
ご家庭の地域がどの慣習に当たるかを確認し、適切な日に鏡開きを行い、年神様からのご利益をいただきましょう。
鏡餅を飾るのに縁起が良い日にちは?
12月13日以降であればいつでも飾れますが、その中でも特に縁起が良いとされ、推奨されているのが12月28日です。
その最大の理由は、漢数字の「八」が下に向かって広がる形をしていることから「末広がり」を意味し、繁栄を願うお正月の飾りにふさわしいとされているためです。
また、クリスマスが終わり、年末の大掃除も一段落している家庭が多いため、落ち着いて新年を迎える準備をするのに最適なタイミングと言えるでしょう。
もし28日に飾るのが難しい場合は、30日に飾るのも良い選択肢です。
「仏滅に飾ってもいいの?」と心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、大安や仏滅といった六曜はもともと古代中国の時刻の吉凶占いが由来の俗信です。
神道を中心とする日本古来のお正月行事とは直接的な関係はないため、仏滅の日に飾り付けを行っても全く問題ないとされています。
鏡餅を飾ってはいけない日はいつ?
鏡餅を飾る日取りには、古くからの習わしで避けるべきとされる日が二日あります。
それは、12月29日と12月31日です。
避けるべき日とその理由
- 12月29日
「九」の読みが「苦」を連想させ、「二重苦」や「苦餅(くもち)」につながるとして、縁起が悪いと古くから忌み嫌われてきました。 - 12月31日
大晦日に飾ることを「一夜飾り」と呼びます。これは葬儀の際の飾り付け(一夜飾り)を連想させるだけでなく、年の瀬も押し迫った慌ただしい中で準備をすることが、お迎えする年神様に対して誠意に欠ける、失礼な行為であると考えられています。
これらの慣習は、単なる迷信というだけでなく、余裕を持って丁寧に神様をお迎えしようという、古来からの日本人の心構えの表れでもあります。
お正月の準備は計画的に進め、遅くとも30日までには飾り終えるように心がけましょう。
鏡餅はいつから販売される?飾る際のコツ
鏡餅を飾らない方がいい場所ってある?
結論から言うと、鏡餅を飾る場所について、「ここは絶対にダメ」という厳密に禁止されている場所は特にありません。
古来の信仰では、お迎えした年神様は家の中心だけに留まるのではなく、その力が各部屋に分かれて宿る「分霊(ぶんれい)」という考え方がありました。
そのため、神聖な場所はもちろんのこと、台所、書斎、子ども部屋、さらにはトイレなど、家の中のあらゆる場所に鏡餅をお供えする風習もあったのです。
不浄とされる場所に飾ることで、むしろ年神様の力によってその場が清められる、という解釈も存在します。
最も大切なのは、場所そのものよりも、年神様をお迎えする感謝と敬意の気持ちです。
伝統的には神棚や床の間が最上位の場所とされていますが、現代の住宅事情に合わせて、家族が最も多くの時間を過ごすリビングや、人々をお迎えする玄関など、清潔に整えられた、家にとって大切だと思う場所に飾るのが良いでしょう。
現代の住宅でのおすすめの飾り場所
- 神棚や仏壇
- 床の間(ある場合)
- 家族が集まるリビングやダイニングの棚の上
- お客様をお迎えする玄関
- 火を司る台所・キッチン
鏡餅を仏壇に飾っても大丈夫?
鏡餅をご先祖様がいらっしゃる仏壇にお供えすることは、全く問題ありません。
お正月は、豊作や幸福をもたらす年神様をお迎えする行事であると同時に、その年神様は私たちの「ご先祖様」でもある、という考え方が古くからあります。
新年になると、ご先祖様が子孫の繁栄と健康を見守るために各家庭に帰ってくるとされているのです。
そのため、ご先祖様が祀られている仏壇に鏡餅をお供えすることは、感謝を伝える自然で理にかなった行為と言えます。
神棚があるご家庭ではそちらを優先するのが一般的ですが、仏壇に飾る際は、ご本尊様やお位牌が隠れてしまわないよう、少し脇にずらしてお供えするなどの配慮をするとより丁寧でしょう。
レプリカや置物の鏡餅でも大丈夫?
近年、木製やガラス製、ちりめん細工など、毎年繰り返し使えるおしゃれなデザインのレプリカ(置物)の鏡餅が大変人気です。
現代のインテリアに合うこれらの置物を飾ること自体は、全く問題ありません。
ただし、ここで絶対に忘れてはならないのが、鏡餅という風習の最も重要な本質です。
それは、飾ることだけでなく、年神様が宿ったお餅を「お下がりとして食べる」(出典:東京都神社庁【神社の豆知識】)ことで、神様の力を体内に取り入れ、一年の活力をいただくという点にあります。
食べることに本当の意味がある
置物タイプの鏡餅は、あくまでも「飾り」としての役割です。
そのため、置物を飾る場合でも、それとは別に必ず「食べられるお餅」を一緒にお供えするようにしましょう。
最近では、見た目が鏡餅の形をした容器の中に、個包装された切り餅や丸餅が入っている便利なセット商品が多く販売されています。
これらを活用すれば、飾る際の見た目の伝統と、いただいた後のおいしさの両方を手軽に実現できます。
お供えの主体はあくまでも「食べられるお餅」であり、レプリカはそれを補うもの、と理解しておくことが大切です。
鏡開きより前に食べるのはダメ?
結論として、年神様が家に滞在されている期間、すなわち松の内(一般的に1月7日まで)が明ける前に鏡餅を片付けたり、鏡開きの日より前に食べたりするのは、作法として避けるべきとされています。
鏡餅は、お正月期間中、年神様が宿るための神聖な「依り代(よりしろ)」です。
鏡開きという行事は、年神様が山へお帰りになるのをお見送りした後に、その力が宿ったお餅をいただくことでご利益を授かる儀式なのです。
そのため、神様がいらっしゃる期間中に鏡餅を下げてしまうのは、神様に対して大変失礼な行為にあたると考えられています。
鏡餅を割る際の注意点
鏡餅を割る際には、武士の文化が色濃く残る風習として、包丁などの刃物を使うことは「切腹」を連想させるため、縁起が悪いとされています。
そのため、手や木槌(きづち)などで割るのが伝統的な作法です。「開く」という縁起の良い言葉を使うのもこのためです。
お供えして固くなったお餅は、そのままでは割りにくいですが、しばらく水に浸けておくと柔らかくなり、調理しやすくなります。
お汁粉やぜんざい、お雑煮に入れたり、細かく砕いて油で揚げておかきにするなど、感謝の気持ちを込めて最後までおいしくいただきましょう。
鏡餅はいつから販売されるのか?まとめ
この記事では、鏡餅の販売時期から飾り方、片付け方まで、お正月を迎えるにあたって知っておきたい知識を、その背景にある意味とともに詳しく解説しました。
最後に、この記事の重要なポイントをリスト形式で振り返ります。
- 鏡餅の店頭販売は早い店舗では11月上旬から開始される
- 鏡餅を飾り始めるのは「正月事始め」の12月13日以降が良い
- 最も縁起が良いとされる飾り付けの日は末広がりの12月28日
- 「二重苦」を連想させる12月29日は避けるべき
- 「一夜飾り」となる12月31日の飾り付けも年神様に失礼とされる
- 飾っておく期間は鏡開きの日まで
- 鏡開きの日は関東では1月11日、関西では1月15日など地域差がある
- 飾る場所に厳格な禁止はないが神棚やリビングなどが一般的
- ご先祖様への感謝を込めて仏壇に飾ることも問題ない
- 置物の鏡餅を飾る場合は必ず食べられる本物のお餅も一緒に用意する
- 鏡餅を食べることで年神様の力を分けてもらうという重要な意味がある
- 年神様がいらっしゃる松の内が明ける前に食べるのは作法違反
- 鏡餅を割る際は縁起を担いで刃物を使わず木槌などで「開く」
- お供えしたお餅は感謝を込めて最後までおいしくいただく
- 一番大切なのは形だけでなく年神様やご先祖様をお迎えする感謝の気持ち