鏡餅を仏滅に飾っても大丈夫?六曜との関係&飾る際に注意すること

年末が近づくと、鏡餅の準備が始まりますね。
いざカレンダーを見て「あ、飾ろうと思った日が仏滅だ…」と不安になった経験はありませんか?
鏡餅という神聖なものを、仏滅や赤口といった凶日に飾っていいのか、すごく気になりますよね。
どうせなら大安や先勝、友引のような吉日を選ぶべきか、迷うところです。
さらに、12月28日や29日、30日、31日など、具体的にどの日が正解なのか、そして鏡餅はいつまで飾って、鏡開きはいつ行うのが正しいのか、悩ましいルールがたくさんあります。
この記事では、そんな「鏡餅と仏滅」に関する疑問や、飾る日にまつわる伝統的なルールについて、スッキリ解決していきますね!
- 鏡餅と仏滅(六曜)が本来は無関係である理由
- 六曜よりも優先すべき「飾ってはいけない日」
- 鏡餅を飾るのに最も適した「最適な日」
- 鏡餅はいつまで飾り、いつ鏡開きをすれば良いか
鏡餅は仏滅に飾ってもいい?神道との関係
まず、一番気になる「仏滅に飾っても大丈夫?」という核心からお話ししますね。
結論から言うと、全く問題ありません。
「え、でも仏滅って凶日じゃん!」と思いますよね。
なぜ大丈夫なのか、その理由を神道と六曜の関係から見ていきましょう。
鏡餅は年神様をお迎えする神事
そもそも鏡餅が何のためにあるか、というと、これは新年に幸福をもたらしてくれる「年神様(としがみさま)」をお迎えするためのお供え物なんです。
年神様というのは、その年一年間の家族の健康や五穀豊穣(現代でいえば商売繁盛など)をもたらしてくれる、とってもありがたい神様です。
ただのお飾りではなく、年神様が新年の間いらっしゃるための「依り代(よりしろ)」、つまり神様が宿る神聖な場所としての役割も持っています。
鏡餅の「鏡」は、昔の銅鏡を模したもので、神様の力が宿るとされてきました。
このように、鏡餅を飾るという行為は、日本の伝統的な「神道(しんとう)」に基づいた神聖な儀礼(神事)なんです。
この点をまず押さえておいてください。
六曜(大安・仏滅)は神道と無関係
一方で、「仏滅」や「大安」といった吉凶判断は、「六曜(ろくよう)」(または六輝)と呼ばれるものです。
この六曜、実は中国由来の民俗暦で、日本に伝わったのも鎌倉時代末期ごろとされています。
当時の名前は今とはかなり違っていたようです。
大事なポイントはここです。
六曜は、鏡餅のルーツである「神道」とは全く関係がない、別の文化体系なんです。
さらに言うと、「仏滅」という漢字から仏教を連想するかもしれませんが、実は仏教とも一切関係ありません。
「仏滅」は当て字だった?
「仏滅」という字面(じづら)は、「仏も滅するほどの大凶日」と連想させて、すごく怖いですよね。
でも、これは歴史的な誤解(当て字)なんです。
豆知識:「仏滅」の語源
「仏滅」は、もともと「虚亡(きょもう)」や「空亡(くうぼう)」と呼ばれていました。
それが後に「物滅(ぶつめつ)」(=物が滅する、万事むなしい)と書かれるようになり、最終的に音(ぶつ)が同じ「仏」の字が当て字として使われるようになった、というのが有力な説です。
仏教の教えとは何の関係もないんですね。
実は六曜、明治時代には「迷信だ」として政府に禁止され、一度廃れかけた歴史があるんです。
それが第二次世界大戦後に統制がなくなると、「大安=吉」「仏滅=凶」という分かりやすさから、民衆の間に急速に広まっていった、という背景があります。
仏滅や赤口に飾っても問題ない理由
ここまでのお話で、もうお分かりかもしれませんね。
鏡餅は「神道」の神事。
仏滅や赤口は「神道とは無関係」な民俗暦(六曜)。
つまり、神道の儀式(鏡餅を飾る)を、無関係な六曜のルール(仏滅や赤口)で縛る必要は、本来まったくない、ということなんです。
実際に神社関係者からも「六曜は神道と関係ないので、仏滅の日でも大丈夫」という見解が示されています。
私たちが「仏滅だから縁起が悪いかも…」と感じるのは、神学的なルール違反ではなく、「縁起を担ぎたい」という自然な心理や、社会的な慣習の影響が大きいんですね。
結婚式で大安が好まれるのと同じ感覚に近いかもしれません。
理論と心理のギャップ
この問題の面白さは、「理論上は問題ない」ことと、「心情的に気になる」という現実のギャップにあると思います。
- 神道の立場(理論): 神事と六曜は無関係なので、問題ない。
- 生活者の心理(心情): せっかくの新年準備。わざわざ「凶」と書かれた日を選んで、少しでも不安な気持ちで新年を迎えたくない。
どちらも間違ってはいないんですよね。
だからこそ、「本来は気にしなくて良い」という知識を持った上で、ご自身の「安心感」を優先して(例えば仏滅を避けて)選ぶのは、個人の「心情的な選択」としてアリだと私は思います。
先勝や友引の日に飾る場合の注意点
「仏滅や赤口は避けたとして、じゃあ先勝や友引ならいいの?」と思うかもしれません。
もちろん、これらも神道とは無関係なので気にしなくてOKです。
ただ、「どうせなら六曜の縁起も担ぎたい!」という方のために、各六曜の時間帯の吉凶を補足しておきますね。
六曜は時間帯によって吉凶が変わるものがあるんです。
| 六曜の名称 | 意味と時間帯の吉凶 |
|---|---|
| 大安 (たいあん) | 「大いに安し」。終日、万事において吉。 |
| 先勝 (せんしょう) | 「先んずれば即ち勝つ」。午前中が吉、午後は凶。飾るなら午前中に。 |
| 友引 (ともびき) | 「友を引き寄せる」。朝夕は吉、昼(11時~13時頃)のみ凶。 |
| 赤口 (しゃっこう) | 凶日。ただし昼(午の刻=11時~13時頃)のみ吉。 |
| 先負 (せんぶ) | 「先んずれば即ち負ける」。午前中が凶、午後は吉。飾るなら午後に。 |
| 仏滅 (ぶつめつ) | 「物が滅する」。終日、万事において凶。(ただし鏡餅とは無関係) |
もし六曜を気にする場合は、先勝なら午前中、先負なら午後、といった時間帯も意識してみると、より安心できるかもしれませんね。
28日仏滅と29日大安、どっち?
ここで、よくある悩みが出てきます。
「12月28日が仏滅で、12月29日は大安。この場合、いつ飾るべき?」という問題です。
六曜だけを信じるなら「29日の大安」を選びたくなりますが…
結論は、迷わず「12月28日(仏滅)」です。
「え!? 大安を避けて、わざわざ仏滅を選ぶの?」と驚かれるかもしれませんが、これには大事な理由があります。
実は、鏡餅を飾る日には、六曜の吉凶(大安・仏滅)よりも、はるかに優先すべき「日本古来の日付のタブー」が存在するんです。
次のセクションで、その「本当に重要なルール」について詳しく解説しますね!
鏡餅は仏滅より飾る日を優先しよう
六曜(仏滅や大安)は、あくまで個人の「安心感」のために考慮する「選択肢」に過ぎません。
ですが、これからお話しする日付のルールは、年神様をお迎えする上で古くから大切にされてきた「伝統的なタブー」です。
こちらを最優先で守るようにしましょう!
NGな日①:12月29日(二重苦)
最も避けるべき日:12月29日
カレンダーで「29日」が空いていても、この日に正月飾り(鏡餅)を飾るのは古くからタブーとされています。
理由は、日付の「9」が「苦(く)」を連想させ、「二重苦(にじゅうく)」につながるため、新年に「苦」を持ち込みたくない、という縁起担ぎ(忌避)のためです。
(一部の地域では「29(ふく)=福」と読んで逆に縁起が良いとすることもあるそうですが、これはかなり限定的な解釈かなと思います。
全国的には「苦」を連想する方が圧倒的に多いため、あえてこの日を選ぶのは避けた方が最も無難な判断だと私は思います。)
先ほどの例「28日仏滅 vs 29日大安」で28日を選ぶべき理由は、たとえ大安であっても、この「二重苦」のタブーを犯してしまうからなんですね。
六曜の吉日よりも、古来のタブーを避ける方が優先度が高いんです。
NGな日②:12月31日(一夜飾り)
避けるべき日:12月31日(大晦日)
大晦日の12月31日に飾ることも、29日と同様にタブー視されています。
これは「一夜飾り(いちやかざり)」と呼ばれます。
新年の神様である年神様をお迎えする準備を、たった一晩、それも大晦日のギリギリになってから行うのは、「誠意がない」「神様に対して失礼にあたる」と考えられているためです。
また、葬儀の飾り付けが「一夜限り」であることから、それを連想させて不吉だ、という説もあるようです。
もし31日になってしまったら?
もし、うっかり31日になってしまった(または、忙しくてそれしか日がない!)場合は、どうすれば良いでしょうか。
もちろん、飾らないよりはずっと良いです。
年神様をお迎えする上で最も大切なのは「心の誠実さ」だとされています。
もし飾らざるを得ない場合は、飾った鏡餅に軽くお清めの塩を振ったりして、「お迎えが遅れましたが、どうぞお越しください」「今年もよろしくお願いします」と感謝の気持ちを伝えることが大切です。
そして、翌年からは28日や30日に準備するよう意識すれば問題ありませんよ。
最適な日:12月28日(末広がり)
では、NGな日を避けたとして、いつ飾るのが一番良いのでしょうか。
最も推奨される日は「12月28日」です。
これは、漢数字の「八」が「末広がり」を意味し、非常に縁起が良いとされているためです。
新年の繁栄を願うのにピッタリの日ですね。
準備は「正月事始め」から
年神様をお迎えする準備は、伝統的には12月13日の「正月事始め」(しょうがつことはじめ)から始まります。
この日は、古くから年神様をお迎えするために家の「煤払い(すすはらい)」(大掃除)を始める日とされてきました。
(出典:政府広報オンライン「日本の正月のしつらいの意味と心」)
まず家全体をキレイに清浄な状態にしてから、神聖な飾り(鏡餅)を整えるのが古来の習わしなんです。
正月準備の理想的な流れ
- 12月13日(正月事始め): 大掃除(煤払い)を開始する。
- 12月28日(末広がり): 掃除が終わった清浄な場所に鏡餅を飾る。
この流れで準備できると、とても気持ちよく新年を迎えられそうですね!
次善の日:12月30日
「28日に飾るのを逃しちゃった!」という場合も大丈夫です。
禁忌の日である「29日(二重苦)」と「31日(一夜飾り)」を避ければ良いので、「12月30日」に飾るのが次善の策(OKな日)とされています。
30日は特に縁起が悪いとされる理由もないため、28日を逃した場合は30日、と覚えておくと良いですね。
28日か30日。
このどちらかで準備するのが、伝統的にも心情的にもベストな選択と言えそうですね。
鏡餅はいつまで?鏡開きの日程
鏡餅を飾ったら、次に気になるのは「いつまで飾っておくのか」ですよね。
年神様へのお供え物である鏡餅を下げて、家族でいただく日を「鏡開き(かがみびらき)」と呼びます。
「松の内」が明けるタイミング
鏡開きを行う日は、基本的に「松の内」が終わった後とされています。
「松の内」とは、門松などのお正月飾りを飾っておく期間のことで、=(イコール)年神様がいらっしゃる期間、とされています。
この「松の内」の期間が、地域によって異なるんです。
そのため、鏡開きの日程も地域差があります。
鏡開きの日程(目安)
- 関東・東北・九州など多くの地域
・松の内:1月7日まで
→ 鏡開き:1月11日 - 関西など一部地域
・松の内:1月15日まで(小正月)
→ 鏡開き:1月15日または20日
※お住まいの地域の風習によって異なる場合がありますので、あくまで目安としてくださいね。
鏡開きで一年間の無病息災を祈る
鏡餅には、年神様の力が宿っている(御霊が宿っている)と考えられています。
鏡開きは、その神様の力が宿ったお餅を、家族で分けていただく(お雑煮やおしるこにする)ことで、神様の力を分けてもらい、家族の一年間の無病息災を祈る、という大切な行事なんです。
ちなみに、鏡餅を割る(開く)時に包丁などの刃物を使うのは「切腹」を連想させて縁起が悪いとされ、木槌(きづち)などで割るのが伝統です。
(カチカチに硬いので、割るのが本当に大変ですけどね…!)
鏡餅を仏滅に飾っても大丈夫?まとめ
最後に、「鏡餅と仏滅」の問題で迷った時の判断基準を、優先順位でまとめておきますね。
鏡餅を飾る日の優先順位
- 【優先度:高】伝統的な日付のルール
NGな日(避ける): 12月29日(二重苦)、12月31日(一夜飾り)。
推奨日(選ぶ): 12月28日(末広がり)、次点で12月30日。 - 【優先度:低】六曜(民俗暦)
仏滅、大安、赤口など。これらは神道とは無関係です。ご自身の「安心感」のために考慮する、任意の要素と捉えて大丈夫です。
「鏡餅を仏滅に飾っていいか」と不安に思っていた方にとって、本当に大切なのは六曜の吉凶よりも、「29日と31日を避ける」という日本古来のルールの方だったんですね。
もし12月28日がたまたま仏滅だったとしても、それは伝統的なルール(末広がり)を優先して、まったく問題なく飾れる日、ということになります。
年神様をお迎えする準備で一番大切なのは、暦の吉凶以上に、大掃除を済ませた清浄な空間 と、家族の健康と繁栄を願う感謝の心 だと私は思います。
この記事で、皆さんの「鏡餅と仏滅」に関するモヤモヤが解消され、気持ちよく新年を迎える準備のお手伝いができたら嬉しいです!
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