鏡餅を夜に飾るのは良くない?時間帯よりも注意すべきポイント
新しい年を迎える準備として欠かせない鏡餅ですが、仕事などで日中に飾る時間がなく、「夜に飾るのは縁起が悪いのでは?」と不安に思ったことはありませんか。
実は、鏡餅を飾る時間帯に厳密な決まりはありません。
しかし、古くからの風習として、知っておきたい縁起の良いタイミングや避けるべきとされる一夜飾りなどの注意点が存在します。
この記事では、鏡餅を夜に飾ることについての考え方から、正しい飾り方、片付けるタイミング、処分の方法まで、気になる疑問を一つひとつ丁寧に解説し、皆様が安心して新年を迎えるお手伝いをします。
- 鏡餅を夜に飾ることの是非や文化的背景
- 縁起が良いとされる日と、古くから避けられてきた日
- 地域差も含めた正月飾りを飾る期間と正しい処分方法
- 使い回しやレプリカなど、正月飾りに関するさまざまな疑問への回答
鏡餅を夜に飾るのは問題ない?
鏡餅を夜に飾るのは良くないのか?
結論から言うと、鏡餅を夜に飾ること自体を明確に禁止するルールはありません。
しかし、日本の伝統や歴史を振り返ると、夜間に正月飾りを飾ることは一般的ではなかったようです。
その背景には、古代日本の宗教観や生活習慣が影響しています。
まだ電灯がなかった時代、夜は闇に包まれ、人々の力の及ばない時間でした。
古くは、そうした夜の時間帯は邪気や悪霊が活動すると考えられていました。
鏡餅をはじめとする正月飾りは、新しい年の幸運を招き入れ、家を守る大切な役割を持つ縁起物です。
そのため、神聖な飾り付けを夜に行うことで、邪気が飾り物に影響を与えるのではないか、という懸念があったのです。
ただ、現代では生活様式が大きく変化し、仕事や家庭の都合などで夜にしか準備の時間が取れない家庭も増えています。
伝統を尊重する気持ちは大切ですが、最も重要なのは年神様をお迎えし、新しい一年の幸せを願う感謝の心です。
もし夜に飾る場合は、こうした伝統的な背景を理解した上で、「今年もよろしくお願いします」という気持ちを込めて、心を込めて丁寧に飾り付けを行いましょう。
現代のライフスタイルでは、日中に時間を確保するのが難しいこともありますよね。
大切なのは形式にこだわりすぎることよりも、新しい年を清々しい気持ちで迎える準備をする心そのものです。
時間帯よりも一夜飾りに注意すべき
夜に飾ること以上に、古くから縁起が悪いとして強く避けられているのが「一夜飾り」です。
一夜飾りとは、大晦日である12月31日に慌てて正月飾りを飾ることを指し、これは年神様を迎える準備としてふさわしくないとされています。
この習慣が避けられるのには、主に2つの明確な理由があります。
一夜飾りが避けられる理由
1. 神様への不敬にあたる
お正月にお迎えする年神様は、一年に一度訪れる大切なお客様です。
そのお客様をお迎えする準備を、前日に急ごしらえで行うことは、誠意に欠け大変失礼にあたると考えられています。
十分に時間をかけて家を清め、飾り付けをすることが、神様への敬意の表れとされていました。
2. 葬儀を連想させる
人の死という不幸があった際、お葬式ではお通夜の準備を一日で行い、翌日には片付けるのが一般的です。
このことから、一夜限りの飾り付けが弔事を連想させるため、輝かしい新年の祝い事にはふさわしくない、不吉なものとされています。
これらの理由から、鏡餅や正月飾りは、少なくとも12月30日までには飾り終えるのが望ましいとされています。
忙しい年末ではありますが、計画的に準備を進め、余裕をもって年神様をお迎えしたいものです。
鏡餅を飾るのに縁起の良い日はある?
お正月の準備を始める日とされる「正月事始め」の12月13日以降であれば、いつ飾っても問題ありません。
しかし、どうせ飾るのであれば、縁起が良いとされる日を選びたいものです。
その中でも特に縁起が良いとされる日と、一般的に避けるべき日があります。
日付 | 縁起 | 理由と解説 |
---|---|---|
12月28日 | 大変良い | 漢数字の「八」が末広がりを意味し、繁栄を象徴するため、この日に飾るのが最も良いとされています。 |
12月30日 | 良い | キリの良い数字であり、一夜飾りにもあたらないため、28日に間に合わなかった場合におすすめの日です。 |
12月29日 | 避けるべき | 読みが「二重苦(にじゅうく)」や「苦待つ」に通じるため、縁起が悪いと古くから避けられています。 |
12月31日 | 避けるべき | 前述の通り「一夜飾り」となり、神様に大変失礼にあたるため、避けるべき日です。 |
29日は「福の日」という考え方も
近年では、29日を「ふく(福)」と読み、「福を呼ぶ日」として、お正月飾りを推奨する考え方もあります。
これは、おせち料理などを製造・販売する株式会社紀文食品が制定したもので、正月行事の意味を知ることで福を招いてもらうことを目的としています。
(参照:PR TIMES MAGAZINE「福の日(12月29日)|意味や由来・広報PRに活用するポイントと事例を紹介」)
ただ、伝統的には「苦」を連想させる日として避ける風潮が根強いため、ご年配の方への配慮も必要な場合は、28日か30日に飾るのが安心でしょう。
鏡餅を飾ってはいけない場所は?
鏡餅は年神様の依り代(よりしろ)となる神聖なものです。
そのため、飾る場所に厳密な決まりはありませんが、年神様に敬意を払い、ふさわしい場所と避けるべき場所についての考え方が存在します。
一般的に推奨される場所
古くから、鏡餅は床の間や神棚に飾るのが最も丁寧な飾り方とされてきました。
床の間は家の中で最も格の高い場所(上座)であり、神棚は神様を祀る神聖な場所だからです。
現代の住宅では床の間や神棚がない場合も多いため、その場合は家族が集まるリビングの棚の上や、サイドボードの上など、少し改まった清浄な場所に飾ると良いでしょう。
年神様は五穀豊穣の神様でもあるため、台所(キッチン)に飾るのも良いとされています。
考え方が分かれる場所
玄関やトイレに飾ることについては、様々な意見があり、一概に良い・悪いとは言えません。
- 玄関:お客様や年神様をお迎えする家の顔であるため飾るのにふさわしい、という考え方があります。
一方で、人の出入りが激しく落ち着かない場所であり、家の中では格の低い「下座」にあたるため避けるべきという説もあります。
- トイレ:一般的に不浄な場所とされるため、神聖な鏡餅を飾るのは避けるべきという考え方が主流です。
しかし、「トイレにも神様(厠神様)がいる」という考えから、その場所の神様への感謝を示すために小さな鏡餅を飾る地域や家庭もあります。
最終的には、その家の伝統や考え方によります。
大切なのは、神様に対して失礼にならず、埃などがなく清潔に保たれた場所に飾ることです。
家族がいつも目にし、自然と感謝の気持ちを持てるような場所を選ぶのが良いでしょう。
鏡餅や正月飾りは使い回しても大丈夫?
鏡餅や門松、しめ飾りといった正月飾りは、毎年新しいものを用意するのが基本的なルールです。
これは、正月飾りが単なる装飾ではなく、その年の年神様をお迎えするための神聖な「神具」であるという考えに基づいています。
前年の飾りを使い回すことは、古い年の運気や厄をそのまま持ち越すことになり、新しい年を清々しい気持ちで迎える妨げになると考えられています。
何より、一年に一度いらっしゃる新しい年神様に対して、古い飾りでお迎えするのは失礼にあたる、という日本古来の清浄を尊ぶ考え方が根底にあります。
インテリア用の飾りは例外
近年では、木製やガラス製のおしゃれな鏡餅のオブジェや、モダンなデザインのしめ縄リースなど、インテリアとして楽しむ正月飾りも増えています。
これらは伝統的な神具というよりは、季節の装飾品としての側面が強いものです。
したがって、神事としてではなくインテリアとして割り切って使用する場合は、翌年以降も大切に保管して使い回して問題ありません。
伝統的な意味合いを大切にするのであれば毎年新しくし、季節のインテリアとして楽しむのであれば大切に保管して翌年も使う、というように、ご家庭の方針に合わせて選ぶのが良いでしょう。
鏡餅のレプリカや置物を使うのは問題ない?
衛生面での管理がしやすく、毎年使える手軽さから、プラスチック製の容器に充填された鏡餅や、木やガラスで作られた置物(レプリカ)を飾る家庭も増えています。
こうしたレプリカを飾ること自体は、全く問題ありません。
しかし、鏡餅の風習で非常に大切なのは、年神様が宿ったお餅を「いただく(食べる)」ことで、その力を分けてもらい、一年の無病息災を願うという「鏡開き」の行為にあります。
そのため、置物だけを飾るのではなく、別に食用の小さなお餅でも良いので、一緒に供えることが推奨されています。
置物はあくまで美しい飾りとし、神様へのお供え物として本物のお餅を用意することで、古くから伝わる伝統的な意味合いを大切にすることができます。
見た目の美しさや手軽さと、古くから伝わる風習の意味。
その両方を尊重できると、より気持ちよく新年を迎えられそうですね。
鏡餅を夜に飾る以外に注意したいこと
正月飾りを飾るタイミングは鏡餅と同じ?
はい、門松やしめ飾りといった他の正月飾りも、鏡餅と基本的に同じタイミングで飾ります。
つまり、正月事始めである12月13日以降に準備を始め、縁起の悪い29日(二重苦)と31日(一夜飾り)を避けて飾るのが一般的です。
現代ではクリスマスが終わり、大掃除が一段落する12月26日以降、特に末広がりで縁起の良い28日までに飾るのが理想的とされています。
全ての正月飾りは、年神様をお迎えするための一式と捉え、同じタイミングで飾り付けを済ませることで、準備が万端に整った清浄な空間に神様をお迎えすることができます。
バラバラに飾るのではなく、まとめて飾り付けを終えるように計画を立てましょう。
正月飾りをずっと飾るのは良くない?いつまで飾る?
正月飾りをいつまでも飾っておくのは良くありません。
飾っておく期間は「松の内(まつのうち)」までとされています。
松の内とは、門松を飾っておく期間、すなわちお正月に年神様が家に滞在されている期間を指します。
この期間が終わると、年神様は天上へお帰りになると考えられており、それに合わせてお迎えするための一連の飾りも片付けるのが古くからの習わしです。
この松の内の期間は、地域によって異なります。
地域 | 松の内の期間 | 片付ける日(目安) |
---|---|---|
関東・東北・九州など | 1月7日まで | 7日の夜、または8日の朝 |
関西地方 | 1月15日まで | 15日の朝 |
関東の松の内が短いのは、江戸時代、三代将軍徳川家光が4月20日に亡くなったことから月命日の20日を避けるようになり、それに伴い鏡開きが1月11日に変更され、松の内も1月7日に短縮されたという歴史的背景があるとされています。
(参照:菊正宗 ネットショップ「「鏡開き」の日、関東は1月11日で、関西は1月20日。」)
上記は一般的な区分であり、同じ県内でも地域によって習慣が異なる場合があります。
ご自身の地域の風習を確認してみるのが良いでしょう。
鏡餅や正月飾りの処分を忘れた場合はどうする?
松の内が過ぎても片付け忘れてしまったり、神社のどんど焼きに持って行くタイミングを逃してしまったりすることもあるかと思います。
その場合でも、自宅で適切にお清めをしてから処分することができますので、ご安心ください。
決してそのままゴミ箱に捨てるようなことはせず、感謝の気持ちを込めて丁寧に扱いましょう。
自宅での処分方法
- 新聞紙や半紙など、大きめのきれいな紙を広げます。
- その紙の上に正月飾りを置きます。
- 塩をひとつまみ取り、飾りにお清めの意味を込めて振りかけます(神道では左→右→中央の順で振るなどの作法もあります)。
- そのまま紙で丁寧に包み、他とは別の袋に入れます。
- お住まいの自治体のルールに従って、燃えるごみとして出します。
年神様をお迎えするために使用した神聖なものですので、他の生活ごみと一緒の袋に混ぜてしまうのは避けましょう。
一年間の感謝の気持ちを込めて、最後まで丁寧に取り扱うことが何よりも大切です。
鏡餅を置いておくのはいつまで?
門松やしめ飾りは「松の内」に片付けますが、鏡餅はそれよりも長く飾っておきます。
鏡餅を飾っておくのは「鏡開き(かがみびらき)」の日までです。
鏡開きとは、年神様にお供えしていた鏡餅を下ろし、家族でいただくことで神様の力を分けてもらい、一年の無病息災を願う大切な行事です。
この鏡開きの日も、松の内と同様に地域によって差があります。
- 全国的に多い日:1月11日
- 関西地方:1月15日または20日
- 京都の一部:1月4日
ご家庭の鏡餅は、お住まいの地域の鏡開きの日に合わせて下げるようにしましょう。
鏡餅を下げる際は、刃物で「切る」のは武士の切腹を連想させ縁起が悪いとされ、木槌などで叩いて「開く」という言葉が使われます。
鏡餅は鏡開きの前に食べてしまっても大丈夫?
お供えしている鏡餅を、鏡開きの前に食べてしまうのは避けるべきとされています。
その理由は、鏡餅が単なるお供え物ではなく、お正月の期間中、年神様が宿られる大切な依り代、つまり神様の居場所だからです。
年神様がご自宅に滞在されている松の内の間に鏡餅を食べてしまうのは、神様がいらっしゃる場所をなくしてしまうことになり、大変失礼にあたると考えられています。
鏡開きは、年神様がお帰りになった後、その力が宿ったお餅をいただくことでご利益を得るための大切な行事です。
感謝の気持ちを込めて、適切な日までお供えし、鏡開きの日においしくいただきましょう。
鏡餅はどんど焼きに出してもOK?
どんど焼き(左義長とも呼ばれます)は、松の内が明けた後に行われる地域の行事で、正月飾りや古いお札などをお焚き上げし、その煙と共に年神様を天にお送りするための神聖な火祭りです。
正月飾りをこの火で燃やすのは、非常に理にかなった処分方法です。
ただし、鏡餅の扱いについては少し注意が必要です。
前述の通り、鏡餅は「食べて」ご利益をいただくことに大きな意味があります。
そのため、お餅自体は家庭でいただき、お餅が入っていたプラスチックの容器や、橙(だいだい)、紙の飾り部分をどんど焼きに持っていくのが一般的です。
地域によっては、どんど焼きの火でお餅を焼いて食べるという風習もあります。
その場合は、地域の慣習に従うのが良いでしょう。
どんど焼きに飾り物を持っていく際は、環境への配慮から、プラスチックや針金、みかんなど、燃えにくいものや食べ物は事前に取り外しておくのがマナーです。
事前に地域のルールを確認しておくと安心です。
鏡餅を夜に飾るのは問題ないのか?まとめ
鏡餅の飾り方に関する様々なルールや背景をご紹介しました。
最後に、この記事の要点をリストでまとめます。
- 鏡餅を夜に飾ることは特に禁止されていない
- 夜間よりも大晦日に飾る「一夜飾り」が縁起が悪いとされる
- 一夜飾りは神様への不敬や葬儀を連想させるため避けるべき
- 飾るのに最も縁起が良い日は末広がりの12月28日
- 避けるべき日は「二重苦」の29日と「一夜飾り」の31日
- 飾る場所は床の間や神棚、家族が集まるリビングが一般的
- 玄関やトイレに飾るかは地域や家庭の考え方による
- 鏡餅や正月飾りは毎年新しいものを用意するのが基本
- インテリア用の置物は大切に保管すれば使い回しても良い
- 置物を飾る場合も別に食べられるお餅を供えるのが望ましい
- 門松やしめ飾りは「松の内」まで飾る(関東は7日、関西は15日など地域差あり)
- 鏡餅は「鏡開き」の日まで飾る(一般的には1月11日)
- 鏡餅は鏡開きの日に食べて神様の力をいただく
- 処分方法はどんど焼きが理想だが自宅で清めてゴミとして出すことも可能
- 処分を忘れた場合は感謝を込めて塩で清めてから処分する