鏡餅の橙の代わりとして使えるものは?代用品の選び方や飾り方
いよいよ年の瀬が迫り、新年の準備に忙しくなる季節ですね。
お正月の準備の中でも特に象徴的なのが、年神様をお迎えするための鏡餅です。
しかし、いざ鏡餅を用意する際、「本来飾るべき橙(だいだい)がどこにも売っていない…」と困った経験はありませんか?
多くの方が橙の代わりとして、手に入りやすい葉付きみかんなどの代用品を検討しますが、そもそも橙とみかんでは縁起物としての意味に違いはあるのでしょうか。
また、最近よく見かけるプラスチック製のものでも良いのか、お供えした後に食べても良いのかなど、些細ながらも気になる疑問が次々と浮かびます。
この記事では、そうした鏡餅と橙の代わりに関する古くからの由来や意味を丁寧に紐解きつつ、現代のライフスタイルに合った飾り方まで、幅広く詳しく解説していきます。
- 鏡餅に使う橙の代用品について
- 橙とみかんの縁起的な意味の違い
- 葉付きやプラスチック製など代用品の選び方
- みかん以外の飾りや地域による違い
鏡餅の橙の代わりに使えるものについて
鏡餅の橙の代わりとして使えるものは?
鏡餅の上に飾るための橙が手に入らない場合、最も一般的で広く受け入れられている代用品は「みかん」です。
現代では、年末になるとスーパーの店頭に並ぶ鏡餅セットにも、プラスチック製のみかんが付属していることがほとんどで、この習慣が広く浸透していることがうかがえます。
そもそも、なぜ伝統ある橙の代わりがここまで一般的に求められるようになったのでしょうか。
それには、私たちの生活様式の変化を反映した、いくつかの現実的な理由が存在します。
橙の代用品が使われる理由
- 橙は食用としての需要が少ないため、取り扱う店が限られており、入手が難しい。
- 昔ながらの床の間がある家が減り、現代の住宅事情に合わせた小さな鏡餅を飾る家庭が増えたため、大きな橙ではバランスが悪くなってしまう。
- 橙は強い酸味や苦味が特徴で、生食には向かないため、お供えの後においしく食べられる身近なみかんが好まれた。
このような背景から、本来の橙と色が似ていて、様々な大きさの鏡餅にも合わせやすいサイズ感のみかんが、最も適した代わりとして定着していきました。
特に、お正月の縁起物としては、枝や葉が少し残った「葉付きみかん」が、より丁寧な飾り方として選ばれることも多いです。
橙とみかんの意味の違いは何?
鏡餅の頂点に橙を飾るという古くからの風習には、子孫繁栄を願う深い意味が込められています。
その代用品であるみかんにも、後付けではありますが縁起の良い意味合いが見出されています。
しかし、その由来をたどると、本来の橙が持つ意味とは少しニュアンスが異なります。
それぞれの果物が持つ意味の違いをきちんと理解することで、お正月飾りにかける思いも一層深まり、ご家族にその意味を伝えていくことができるでしょう。
本来の飾り「橙」が持つ意味
橙は、その名前が「代々(だいだい)」という言葉と同じ響きであることから、「家が代々、未来永劫続くように」「子孫が代々繁栄するように」という強い願いが込められています。
(出典:nippon.com 鏡餅の豆知識あれこれ)
この願いを裏付けるのが、橙自身の生態的な特徴です。
この果物は、一度実が熟しても簡単には枝から落ちず、長いときには2~3年も木になったままでいるほどの強い生命力を持っています。
そのため、一つの木に親・子・孫の世代にあたる実が同時になることもあり、その様子がまさしく家族や家系の永続を象徴しているとされたのです。
新しい年の始まりに、一家の安泰と末永い繁栄を願うのに、これほどふさわしい縁起物はないと言えるでしょう。
代用品「みかん」が持つ意味
一方、みかんはあくまで橙の代用として使われ始めたものですが、日本人らしい言葉遊びや解釈によって、こちらにもきちんと縁起の良い意味が与えられています。
代表的なものとして、みかんが属する柑橘(かんきつ)類の「きつ」という音が、吉兆の「吉(きち)」に通じるため、おめでたい果物である、とされています。
また、葉が付いた状態のみかんは「長寿」を、一つの果実の中に多くの種を持つことから「子孫繁栄」を象徴するという後付けの説も生まれました。
種類 | 主な意味 | 由来・特徴 |
---|---|---|
橙(だいだい) | 子孫繁栄、家の永続 | 名前が「代々」に通じる。実が木から落ちにくく、何代もの実が同時になるという生命力の強い特徴から。 |
みかん | 吉兆、長寿、子孫繁栄 | 柑橘(かんきつ)が吉(きち)に通じるという語呂合わせ。葉付きは長寿、種が多いことは子孫繁栄を意味するとも言われる。 |
豆知識:鏡餅全体が「三種の神器」
古くからの非常に格式高い飾り方では、鏡餅全体で日本の皇室に伝わる「三種の神器」を表現することがあります。
その場合、丸い餅は「八咫鏡(やたのかがみ)」、橙は「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」、そして串柿は「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)」に見立てられます。
橙は、ただの果物ではなく、神聖な飾りつけの重要な一部なのです。
みかんを使う場合は葉付きじゃないとダメ?
みかんを橙の代わりとして鏡餅に飾る際、「葉っぱが付いていないと縁起が悪いのでは?」と心配になる方もいるかもしれません。
結論から言うと、必ずしも葉付きでなければならないという厳格な決まりはありませんので、安心してください。
しかし、もし選べる状況にあるのであれば、葉が付いている方がより丁寧で、縁起が良いとされています。
葉が付いていることの象徴的な意味
なぜ葉付きが好まれるかというと、葉が付いている(実際には短い枝が付いている)状態が、その実がまだ木から自然に落ちておらず、枝にしっかりと付いている生命力のある様子を象徴しているからです。
これは、本来の飾りである橙が持つ「木から落ちずに何代も実がなる」という特徴を、みかんで表現するための工夫と言えます。
つまり、葉付きのみかんを用いることで、代用品でありながらも「家系が長く、強く続くように」という本来の橙に込められた願いを、より強く表現することができるのです。
葉が取れてしまったものは「実が(木から)落ちる」ことを連想させてしまうため、縁起を担ぐ上では避けた方が無難かもしれませんね。
年末の売り場では葉付きの小みかんが「お正月用」として売られていることも多いです。
もし選べるのであれば、青々とした葉が付いたものを選ぶと、紅白の鏡餅に彩りが加わって見た目も華やかになり、お正月の雰囲気が一層高まりますよ。
みかんはプラスチック製でも構わない?
近年、鏡餅本体も、プラスチックの容器の中に個包装の切り餅が詰められているタイプの商品が主流になっています。
これと同様に、上に乗せるみかんも、プラスチック製のレプリカで全く問題ありません。
伝統や風習において最も大切なのは、物の形そのものよりも、新年を迎えるにあたって年神様をお迎えし、家族の健康や幸せを願うその気持ちです。
現代の多様なライフスタイルに合わせて、準備や管理がしやすいものを選ぶことは、理にかなった選択と言えるでしょう。
プラスチック製(レプリカ)のメリット
- 本物の果物と違ってカビが生えたり腐ったりする心配がなく、衛生的。
- 一度購入すれば、翌年以降も繰り返し使うことができ、経済的。
- 年末の慌ただしい時期でも、準備や片付けが簡単で手間がかからない。
- 小さなお子様やペットがいるご家庭でも安心して飾れる。
生の果物にこだわらなくても、こうした便利な製品を上手に活用することで、日本の伝統的な風習を無理なく、気軽に生活に取り入れることができます。
ご家庭の状況や考え方に合わせて、最適なものを選んでください。
鏡餅の橙の代わりといろいろな飾り方
みかんだけなく鏡餅自体もレプリカや置物が使える
前述の通り、鏡餅の上の橙(みかん)はプラスチック製のレプリカでも全く問題ありませんが、その考え方は鏡餅そのものにも当てはまります。
最近では、伝統的なお餅の形を模した、ガラス製や木製、陶器製のおしゃれな鏡餅の「置物」も大変人気を集めています。
これらは、お正月の荘厳な雰囲気を演出しつつも、現代的なリビングや洋室のインテリアとしてお部屋の雰囲気を損なうことがありません。
毎年、箱から出して飾り付けを楽しむことができ、もちろんカビの心配もなく、非常に衛生的に管理できるのが大きなメリットです。
もちろん、伝統に則ってつきたての本物のお餅をお供えし、鏡開きの後にいただくという一連の行事を大切にすることも素晴らしいことです。
しかし、集合住宅で飾るスペースが限られている場合や、ご家族にお餅をあまり食べない方がいるご家庭では、こうしたレプリカや置物が非常に便利で合理的です。
繰り返しますが、最も大切なのは年神様をお迎えするという気持ちを込めて、丁寧に飾ることですね。
鏡餅の上のみかんを食べるのは問題ない?
鏡餅の上に本物のみかんをお供えした場合、「鏡開きの後に、このみかんを食べても良いのだろうか」という疑問が自然と湧くかと思います。
これについては、食べても全く問題ありません。
むしろ、神様へのお供え物をいただく行為は「お下がり」を頂戴する、とされ、神様の力が宿った非常に縁起の良いものとして古くから大切にされてきました。
鏡餅に宿った新年の神様(年神様)の魂は「年魂(としだま)」と呼ばれ、これを家長が家族に分け与え、お雑煮などにして食べることで、その年を一年間、無病息災で過ごせる力が得られると考えられてきました。
お餅の上の橙やみかんも同様に、家族で分け合って食べることで、そのご利益を皆で分かち合うことができるでしょう。
食べる際の注意点
お正月期間中、暖房の効いた室内に飾っておいたものですので、衛生面を考慮し、食べる前には必ず表面の皮をきれいに洗いましょう。
また、水分が抜けて乾燥し、味が落ちている可能性もあります。
万が一、皮にカビの兆候が見られるなど、傷んでいるようであれば、縁起物とはいえ無理に食べるのは避けるようにしてください。
鏡餅でみかん以外の飾りは何がある?
鏡餅の飾りは、頂点に置かれる橙やみかんだけではありません。
より伝統的な飾り方では、鏡餅の周りにさまざまな縁起物が飾られます。
これら一つひとつの意味を知ることで、単なる飾りだと思っていたものに深い願いが込められていることがわかり、より豊かにお正月飾りを楽しむことができます。
代表的な飾りとその意味
鏡餅の周りには、以下のような、それぞれに意味を持つ飾りが添えられるのが伝統的です。
飾り | 意味・由来 |
---|---|
裏白(うらじろ) | 葉の裏が白いシダ植物。「心に裏がない清廉潔白さ」や、夫婦仲良くともに白髪になるまでの「長寿」を表す。 |
御幣(ごへい) | 紅白などの紙を折ったもの。赤は魔除け、白は神聖さを表し、四方に手を広げるように繁栄することを願う。 |
四方紅(しほうべに) | 鏡餅の下に敷く、四方を赤く縁取った紙。「天地四方からの災いを払い、一年間の繁栄を願う」という意味がある。 |
譲葉(ゆずりは) | 春に新しい葉が生えそろってから古い葉が落ちるという特徴から、「親から子へ家系が代々途切れることなく続く」ことを象徴する。 |
串柿(くしがき) | 干し柿を串に刺したもの。「嘉来(かき)」という字を当てて「喜びが来る」ことを願う縁起物。三種の神器の「天叢雲剣」に見立てられることもある。 |
もちろん、これらの飾りをすべて完璧に揃える必要はありません。
しかし、一つひとつの意味を知っておくと、お店で飾りのセットを選ぶ際にも、より気持ちを込めて選ぶことができ、お正月を迎える気持ちも一層引き締まりますね。
鏡餅に添える物には地域差がある
鏡餅の飾り付けは、実は全国で完全に統一されているわけではありません。
日本は縦に長く、地域ごとの文化が色濃く残っているため、その土地ならではのユニークな風習が今もなお根付いています。
例えば、和歌山県などの一部の沿岸地域では、鏡餅の上に伊勢海老などの海老を飾ることがあります。
これは、海老のように腰が曲がるまで元気に長生きできるようにという、非常に分かりやすい「長寿」の願いが込められています。
他にも、海の幸である昆布(「よろこぶ」の語呂合わせ)や、するめ(「寿留女」の字を当てる)などを飾る地域もあります。
山の幸、海の幸とその土地で豊富に採れるものをまず最初に神様にお供えするという、古くからの素朴な信仰の形が、今も息づいている証拠と言えるでしょう。(参考:農林水産省 うちの郷土料理 ぼうり)
ご自身の出身地や、パートナーの実家、親戚が集まる地域の飾り付けにどんな特徴があるか、この機会に尋ねてみるのも面白いかもしれません。
きっと、その土地の文化や歴史に触れる、良いきっかけになるでしょう。
まとめ:鏡餅の橙の代わりとして使えるものは?
この記事の重要ポイントをまとめます。
- 鏡餅の上には本来「橙」を飾る
- 橙には「代々」家が続くようにという子孫繁栄の願いがある
- 現代では入手が難しいため「みかん」が一般的な代用品となっている
- みかんは柑橘の「きつ」が「吉」に通じるなど縁起が良いとされる
- みかんを飾る際は葉付きの方が「家系が続く」という意味合いが強まる
- 葉付きでなくても大きな問題はない
- プラスチック製のみかんや鏡餅の置物も広く使われている
- 大切なのは年神様を迎え一年の幸せを願う気持ち
- お供えした本物のみかんは鏡開きの後に食べても良い
- 神様のお下がりとして縁起が良いものとされている
- 食べる前にはきれいに洗うことを忘れない
- みかん以外にも裏白や御幣、串柿など様々な飾りがある
- それぞれの飾りに長寿や繁栄を願う意味が込められている
- 和歌山県の一部では長寿を願って海老を飾るなど地域差もある
- ご家庭の状況や考え方に合わせて最適な飾り方を選ぶことが大切