鏡餅を31日に飾ってしまった…一夜飾りの事後の対処法や心構えについて
慌ただしい年末、仕事や大掃除、買い出しなどに追われ、気づけばカレンダーはもう大晦日。
「しまった、鏡餅を飾り忘れていた!」と慌てて設置したものの、ふと「大晦日である31日に飾ってしまったけど、これって良かったんだっけ?」と一抹の不安がよぎる…。
そんな経験はありませんか。
実は、古くからの日本のならわしでは、大晦日にお正月飾りをすることは「一夜飾り」と呼ばれ、歳神様(としがみさま)という新年の神様をお迎えする上で、できれば避けるべきこととされています。
しかし、現代の多忙な生活の中で、万が一飾ってしまったからといって、過度に心配したり自分を責めたりする必要はまったくありません。
この記事では、鏡餅を31日に飾ってしまった場合の意味や背景、そして心穏やかに新年を迎えるための正しい対処法を詳しく解説します。
元旦に飾る際の注意点や、その他の大晦日のタブーについても触れていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
- 一夜飾りがなぜ縁起が悪いとされるのか
- 鏡餅を31日に飾ってしまった場合の対処法
- 大晦日に避けるべき他のならわし
- 忙しい現代におけるお正月準備の考え方
鏡餅を31日に飾ってしまった…どうすればいい?
鏡餅を31日に飾る=一夜飾りはなぜいけないのか?
鏡餅をはじめとするお正月飾りを、大晦日である12月31日に飾ることは「一夜飾り」と呼ばれ、古くからのならわしで避けるべきとされています。
これは、一年の実りや幸福をもたらすために各家庭を訪れる大切な神様、歳神様(としがみさま)を、誠意を込めてお迎えするという日本の伝統的な考えに基づいています。
(参考:紀文「お正月と年神様」)
大切な客人である歳神様をお迎えする準備を、訪問の前日である大晦日に慌てて行うのは、神様に対して失礼であり、誠意に欠ける行為だと考えられてきました。
さらに、もう一つ重要な理由として、一夜限りの準備が葬儀を連想させるという点があります。
お葬式の際も、お通夜の準備を急いで行い、翌日には告別式、そして飾り物はすぐに片付けられます。
この慌ただしさが、おめでたい新年を迎える行事にはふさわしくないとされ、縁起の悪いこととして強く忌避されてきたのです。
すでに飾ってしまった場合の対処法は?
もし既に一夜飾りをしてしまった場合でも、「神様が怒って罰が当たる」といったことはないと言われていますので、過度に心配しすぎないでください。
大切なのは、間違いに気づいた後の心の持ちようと対応です。
昔からの丁寧な考え方に則るのであれば、一度お飾りを下げて、元旦の朝になってから改めて飾り直すという方法が最も良いとされています。
元旦に飾ることで「一夜限りのお飾り」ではなくなり、年神様を清々しい新年に改めてお迎えする形に整えることができます。
とはいえ、「一度飾ったものを下げるのは、かえって失礼な気がする」と感じる方もいるでしょう。
その場合は、年神様に対して心の中で非礼をお詫びし、「準備が遅れて申し訳ありませんでした」と感謝の気持ちを伝えるだけでも全く問題ありません。
日本の神様は寛容であるとも言われます。
形式だけでなく、心を込めてお迎えする気持ちが何よりも重要です。
飾ってしまった場合の対応策
基本的には気にしすぎないことが一番ですが、どうしても気になる場合は以下の方法を試してみましょう。
- 元旦の朝、清々しい気持ちで飾り直す
- 心の中で年神様にお詫びと日頃の感謝を伝える
- 神聖な場所を示す意味で、飾りの近くに「盛り塩」を置いて清める
お正月飾りを元旦に飾る際の注意点
大晦日までに間に合わず、元旦に飾り付けをすることになった場合は、いくつかの点に注意しましょう。
まず、飾る時間帯はできるだけ朝早い時間、午前中に行うのが望ましいでしょう。
元旦は年神様がいらっしゃる特別な日です。
その日のうちに準備する形にはなりますが、新しい年の始まりである清々しい朝に行うことで、一夜飾りの慌ただしさを避け、丁寧な気持ちを示すことができます。
日付が変わってすぐの深夜0時過ぎに飾るという考え方もありますが、ご家庭の状況に合わせて無理のない時間を選びましょう。
いずれにしても、年神様に対して「準備が遅れて申し訳ありません。
本年もよろしくお願いいたします」という気持ちを込めて、丁寧に飾り付けを行うことが大切です。
大晦日の夜遅くに慌てて飾ってしまうよりは、元旦の朝に気持ちを新たにして飾る方が良い、とされています。
忙しい現代ではやむを得ない事情もあるかと思いますので、気持ちを切り替えて新年を迎える準備をしましょう。
どうしても31日にしか飾れない場合は?
年末ぎりぎりまで仕事の都合があったり、ご家庭の事情でどうしても大晦日にしか時間を確保できないこともあるでしょう。
その場合は、一夜飾りになってしまうことを理解した上で、年神様への感謝と敬意を精一杯払いながら飾ることが大切です。
「何も飾らないよりはずっと良い」と前向きに捉えることもできます。
ただ機械的に設置するのではなく、飾る際には、「準備が遅くなり申し訳ありませんでした。
今年も一年、家族が無事に過ごせたこと、心より感謝申し上げます。
来年もどうぞお見守りください」と心の中で丁寧に伝えながら行いましょう。
そうすることで、単なる作業ではなく、年神様をお迎えする神聖な儀式として、その意味合いが深まります。
豆知識:門松だけでも先に
お正月飾りの中でも、門松は年神様が家へ迷わず来るための目印(依り代)となる、最も重要な飾りです。
もし可能であれば、門松(地域によっては松を一本だけでも良いとされます)だけでも30日までに飾り、鏡餅やしめ飾りといった他の飾りを31日に行う、という方法もあります。
これにより、年神様をお迎えする最低限の準備は整っている、と考えることもできます。
鏡餅を買ってはいけない日とかはある?
「縁起の悪い日に鏡餅を買ってしまったらどうしよう」と心配される方がいるかもしれませんが、鏡餅をいつ買うかについては、特にタブーとされる日はありません。
年末の買い物は混雑しますので、ご自身の都合の良い日に早めに購入しておくのが良いでしょう。
重要なのは「買う日」よりも「飾る日」です。
前述の通り、お正月飾りを飾る日には、避けるべきとされる日があります。
特に12月29日に飾ることは「二重苦(にじゅうく)」や「苦立て(くたて)」を連想させるため、一夜飾りと同様に縁起が悪い日として古くから避けられています。
飾り付けに最も良い日とされているのは12月28日です。
これは、漢数字の「八」が下に向かって広がる形から「末広がり」を意味し、繁栄を願う上で非常に縁起が良いとされるためです。
もし28日を逃してしまった場合は、29日と31日を避け、30日に飾ると良いでしょう。
ちょっと面白い視点:「29日=福の日」?
縁起が悪いとされる29日ですが、近年では「29(ふく)」の語呂合わせから、お正月の準備をする「福の日」と捉える考え方もあります。
(出典:福の日(12月29日)|PR TIMES MAGAZINE)
伝統を重んじるか、新しい解釈を取り入れるかは人それぞれですが、このような多様な考え方があることを知っておくのも面白いですね。
飾る日付 | 評価 | 理由 |
---|---|---|
12月28日 | 最適 | 末広がりの「八」で縁起が良い日。 |
12月29日 | 避けるべき | 「九」が「苦」を連想させ、「二重苦」として忌み嫌われる日。 |
12月30日 | 良い | 旧暦の大晦日にあたるため避けるべきという説もあるが、現代では問題ないとされることが多い。 |
12月31日 | 避けるべき | 「一夜飾り」となり、神様にも弔事にも失礼にあたる日。 |
鏡餅を31日に飾ってしまった場合の対処法
しめ飾りを31日に飾るのも避けるべき?
「一夜飾り」を避けるというならわしは、鏡餅だけに限りません。
しめ飾りや門松など、すべてのお正月飾りに共通する考え方です。
それぞれのお正月飾りには、以下のような大切な役割があります。
- しめ飾り(しめ縄):その場所が年神様をお迎えするのにふさわしい、清浄で神聖な場所であることを示す「結界」の役割。
- 門松:年神様が家々を訪れる際に、迷わないようにするための「目印(依り代)」。
- 鏡餅:家にいらした年神様の霊が宿る場所であり、神様へのお供え物。
これらは三つで一つのセットのようなものです。
そのため、鏡餅と同様に、しめ飾りも慌ただしく準備するのではなく、余裕を持って28日までに飾ることが望ましいとされています。
大晦日(31日)は大掃除もしない方がいいの?
大掃除もまた、大晦日には避けるべきとされている習慣の一つです。
大晦日は年神様をお迎えする日であるため、その神聖な日に家の中をバタバタと騒がしく掃除することは、せっかく来てくださった神様を家の外に追い払ってしまう行為だと考えられているためです。
本来、一年の汚れを落とす大掃除は「煤払い(すすはらい)」と呼ばれ、12月13日の「正月事始め」に神事として行うのが正式な習わしでした。
現代の感覚では、年末の休暇に入ってから大掃除をするのが一般的ですが、それでも遅くとも30日までには主要な掃除を終わらせ、大晦日は静かに神様を迎える準備を整えるのが理想とされています。
もし掃除が残ってしまった場合も、ホコリを軽く払う程度の簡単な掃き掃除に留めておきましょう。
31日はしてはいけないことがいくつかある
大晦日には、これまで解説してきた「一夜飾り」や「大掃除」の他にも、新年を穏やかに迎えるために避けるべきとされることがいくつかあります。
これらは全て、新しい年の神様を敬い、静かにその訪れを待つための、昔ながらの知恵と言えるでしょう。
大晦日の主なタブー
- 餅つき
31日についたお餅は「一夜餅」と呼ばれ、一夜飾りと同様に葬儀を連想させるため縁起が悪いとされます。また、29日につく餅も「苦餅」と呼ばれ忌み嫌われます。餅つきも28日、遅くとも30日までには済ませておきましょう。 - 長時間の火の使用
おせち料理の準備などで長時間煮炊きをすると「灰汁(あく)」が出ます。これが「悪」を出すことに繋がるとされ、また、火の神様である荒神様(こうじんさま)を騒がせるとして、大晦日に台所で火を長く使うことは避けられてきました。おせち料理などの時間のかかる調理は、計画的に進めておくと安心です。
忙しい現代人は臨機応変に対応しよう
ここまで様々なならわしやタブーを紹介してきましたが、最も大切にしていただきたいのは、年神様を敬い、新しい年の幸せを願うその気持ちです。
伝統や風習は、その背景にある意味を理解し、できる範囲で生活に取り入れることが重要であり、ルールを厳格に守れないからといって不幸になるわけではありません。
現代の生活は非常に忙しく、年末ぎりぎりまで仕事という方も少なくありません。
そのような中で、伝統を頑なに守ろうとすることが、かえってご自身のストレスや家庭の不和に繋がっては本末転倒です。
ご自身の状況に合わせて、あまり気負わず、臨機応変に対応していくことが、穏やかな新年を迎える一番の秘訣かもしれません。
多忙な現代の心構え3つのポイント
伝統を尊重しつつ、無理なく新年を迎えるために、以下の3つの考え方を参考にしてみてください。
- できるだけ早めに計画を立てる
大掃除やお飾りの準備は、12月中旬から少しずつ始めるなど、余裕を持ったスケジュールを組むことで、年末の慌ただしさを軽減できます。 - 間に合わなければ元旦に飾る
「一夜飾り」を避けることを優先し、大晦日に間に合わなければ元旦の午前中に飾る、と柔軟に考えましょう。 - 大切なのは感謝の気持ちを伝えること
たとえ準備が遅れてしまっても、年神様への感謝と敬意を心から伝えれば、その気持ちはきっと届くはずです。大切なのは形式よりも、心を込めてお迎えする姿勢です。
鏡餅を31日に飾ってしまった…対処法は?まとめ
この記事の重要ポイントをまとめます。
- 鏡餅を飾るのは12月28日が末広がりで最も良い
- 12月29日は「二重苦」で避けるべき日
- 12月31日の飾りは「一夜飾り」とされ縁起が悪い
- 一夜飾りは神様への礼を欠き葬儀を連想させるため
- このルールはしめ飾りなど正月飾り全般に共通する
- もし31日に飾ってしまったら元旦の朝に飾り直すのが丁寧
- または心の中で感謝とお詫びを伝えれば十分
- どうしても31日になる場合は飾らないよりはずっと良い
- 飾る際は感謝と敬意の気持ちを込めて行う
- 大晦日の大掃除も神様を追い払う行為とされるため避ける
- ならわしは大切だが現代では臨機応変な対応も必要
- 最も重要なのは形式よりも神様を敬う心
- 気持ちを込めてお迎えすれば年神様はきっと来てくれる
- 飾ってしまったことを気に病まず晴れやかな新年を迎えよう