鏡餅を先勝や先負に飾っても大丈夫?正月行事と六曜の関係について
年末が近づきお正月の準備を始める中で、多くの方が悩むのが鏡餅を飾るタイミングではないでしょうか。
古くからの風習である六曜を気にするべきか、特に先勝や先負の日に飾っても良いものかと疑問に思うこともあるでしょう。
また、縁起を担ぐなら、どの時間帯に飾るのが最適なのか、飾り方に関する注意点も知っておきたいところです。
この記事では、鏡餅と六曜の関係性から、先勝・先負の日に飾る際の考え方、そして年神様を気持ちよくお迎えするための正しい知識を詳しく解説します。
- 先勝や先負に鏡餅を飾る際の考え方
- 鏡餅を飾るのに最適な日と避けるべき日
- 日付以外に知っておきたい鏡餅の飾り方の注意点
- 鏡餅の適切な飾り場所や使い回しの可否
鏡餅を先勝や先負に飾っても大丈夫?
鏡餅を先勝や先負に飾っても大丈夫?
結論から言うと、鏡餅を先勝や先負の日に飾ることは全く問題ありません。
なぜなら、六曜はあくまでその日の運勢の目安とされる暦注(れきちゅう)の一つであり、神道の儀式であるお正月の準備そのものを禁止するものではないからです。
ただ、より縁起を担ぎたい、気持ちよく新年を迎えたいと考えるのであれば、それぞれの日の吉とされる時間帯に飾ることを意識してみるのも一つの方法です。
先勝と先負には、古くから時間帯による吉凶の考え方があるとされています。
六曜 | 吉凶と時間帯 |
---|---|
先勝 (せんしょう・せんかち) | 「先んずれば即ち勝つ」という意味を持つ日です。 何事も早めに行動することが良いとされ、 午前中(14時まで)が吉、午後は凶とされています。 |
先負 (せんぷ・せんまけ) | 「先んずれば即ち負ける」という意味を持つ日です。 急がず慌てず、平静を保つのが良いとされ、午前中は凶、午後は吉とされています。 |
もし六曜を気にされるのであれば、先勝の日には午前中に、先負の日には午後に鏡餅を飾る、というように吉の時間帯を選ぶと、より一層晴れやかな気持ちで新年を迎えられるかもしれませんね。
しかし、次に解説するように、六曜そのものとお正月の神事は直接的な関わりがないため、最終的にはご自身のスケジュールに合わせて、心を込めて準備することが最も大切です。
六曜の吉凶は神道や仏教とは関係がない
多くの方が誤解しがちですが、カレンダーでよく目にする六曜は、神道や仏教の教えとは直接的な関係がありません。
その起源は14世紀ごろに中国から日本へ伝わった考え方で、当初は時刻の吉凶を占うためのものだったとされています。
現在のように日付の吉凶を示す暦注として一般に広まったのは、幕末から明治時代にかけてのことです。
国立国会図書館の資料にもあるように、六曜は時代と共に名称や解釈が変化してきました。
(参照:国立国会図書館「日本の暦 第三章 暦の中のことば」)
科学的な根拠がないという理由から、明治政府によって一時期使用が禁止された歴史もあるほど、六曜はあくまで民間で育まれてきた「習わし」や「縁起担ぎ」の一種なのです。
豆知識:六曜は日本独自の文化?
六曜の考え方は、発祥の地である中国ではすでに廃れており、現代の生活の中でカレンダーに記載され、日常的に吉凶を気にする文化は、実質的に日本独自のものと言えます。
そのため、年神様をお迎えする神聖な行事であるお正月飾りと、占いをルーツに持つ六曜を厳密に結びつけて「この日はダメ」と考える必要はない、というのが一般的な見解です。
これらの理由から、「仏滅に神社で結婚式を挙げても問題ない」とされるように、神道の行事である鏡餅飾りを六曜の吉凶と過度に関連付ける必要はありません。
もちろん、ご家庭や地域の慣習を尊重することは大切ですが、それ以上に柔軟に考えて良いでしょう。
鏡餅を飾るのに縁起が良い日取りはある?
六曜とは別に、鏡餅を飾る上で古くから縁起が良いとされている日があります。
それは12月28日です。
この日が推奨される最大の理由は、「八」という漢字が末広がりで、未来への発展や繁栄を意味し、非常に縁起が良いとされているためです。
この日に飾ることで、新しい年が幸多き素晴らしい一年になるようにとの願いが込められています。
いつから飾っていいの?
一般的に、お正月の準備を始める「正月事始め」は12月13日とされています。
そのため、理論上は12月13日以降であれば、いつ飾っても問題ありません。
とはいえ、あまり早く飾りすぎても落ち着かないものです。
現代では、クリスマスが終わった12月26日や27日頃から準備を始め、28日に飾るご家庭が多いようです。
最も大切なのは、年神様をお迎えするための準備を、年末の慌ただしさの中でぞんざいに行うのではなく、感謝の気持ちを込めて丁寧に行うことです。
ご自身のスケジュールに合わせて、心に余裕を持てる日を選びましょう。
鏡餅を飾る時に避けた方がいい日付は?
縁起が良い日がある一方で、古くからの慣習として、鏡餅を飾るのを避けるべきとされる日も存在します。
それは12月29日と12月31日です。
避けるべきとされる日付とその理由
- 12月29日
「九」の読みが「苦」を連想させ、「二重苦」や「苦餅」につながり縁起が悪いとされています。 - 12月31日
大晦日に飾ることを「一夜飾り」と呼び、これは避けるべきとされています。理由としては、お葬式の準備が通夜からの一夜限りであることと通じるため不吉とされる説や、年の瀬も押し迫った慌ただしい準備では、年神様に対して誠意に欠ける失礼な行為である、と考えられているためです。
もし、うっかり準備が遅れて大晦日になってしまった場合はどうすれば良いのでしょうか。
その場合は、無理にその日のうちに飾るよりも、元旦の朝になってから飾る方が良いとされています。
一夜飾りで年神様に失礼をはたらくよりは、年が明けてから心を込めてお迎えする方が望ましい、という考え方です。
補足:29日は「福の日」という新しい解釈も
近年では、29日の読みを「ふく(福)」と捉え、「福を招く日」として縁起が良いとする新しい解釈も生まれています。
これは特に食品業界などで広まった考え方のようですが、定着しているとまでは言えません。
伝統的な考え方を重んじるか、新しい解釈を取り入れるかは、ご家族の意向や地域の慣習に合わせて判断すると良いでしょう。
鏡餅を先勝や先負に飾ってもいいのか?
飾る時間帯によって縁起の良し悪しはある?
鏡餅を飾る日取りについては様々な慣習がありますが、飾る時間帯については特に決まりはありません。
「午前中に飾るべき」「午後の方が良い」といった厳格なルールは存在しないのです。
この記事の前半で解説した通り、六曜の時間帯による吉凶は、もともと神道のお正月の風習とは直接関係がありません。
そのため、六曜の吉凶時間帯を気にして飾る必要も基本的にはないと言えます。
日取りの慣習が重視される一方で、時間帯に決まりがないのは、昔の人々の暮らしに理由があるのかもしれません。
年末の忙しい時期に、特定の時間に縛られることなく、各家庭の都合の良いタイミングで年神様をお迎えする準備を整えることが大切だと考えられていたのでしょう。
もし時間を選ぶのであれば、気持ちの面でスッキリと準備ができる、午前中の明るい時間帯を選ぶのがおすすめです。
これはルールではなく、あくまで清々しい気持ちで新年を迎えるための一つのアイデアです。
最も重要なのは、時間に追われて慌ただしく飾るのではなく、心に余裕を持って丁寧に飾ることです。
鏡餅を飾る時に気を付けたいことは?
年神様への敬意を表し、気持ちよく新年を迎えるために、鏡餅を飾る際には日取り以外にもいくつか注意したいポイントがあります。
神聖なものであることを意識し、失礼のないように飾りましょう。
鏡餅を飾る際の注意点
年神様をお迎えするにあたり、以下のような行為は避けるように心がけましょう。
- 掃除をしていない不潔な場所に置く
鏡餅を飾る場所は、年神様が訪れる神聖な場所です。必ず事前にきれいに掃除をして、埃や汚れがない状態にしてから飾りましょう。
- 神様を見下ろすような低い位置に置く
床の間や棚の上など、ご自身の目線よりも少し高い、見上げる位置に飾るのが基本です。床に直接置いたり、人が頻繁に見下ろすような低い場所に置いたりするのは失礼にあたります。
- 不安定でバランスの悪い場所に置く
お供えした鏡餅が落ちてしまっては大変縁起が悪いです。また、地震などの揺れで落下する危険性もあります。
必ず安定した平らな場所を選んで飾りましょう。
- テレビや電子機器の上など騒がしい場所に置く
テレビやパソコンの上は熱を持つだけでなく、騒がしい場所でもあるため、神様が落ち着いて滞在できる場所としてふさわしくありません。静かで清らかな場所を選びましょう。
これらの注意点は、難しく考える必要はありません。
「自分が大切な客人をもてなすなら、どこに案内するか」という視点で考えれば、自ずとふさわしい場所が見つかるはずです。
鏡餅を置く時に避けた方がいい場所は?
鏡餅は、新年に訪れる年神様が滞在するための大切な「依り代(よりしろ)」となる神聖なものです。
そのため、飾る場所は家の中でも清らかで、敬意を払える場所を選ぶのが基本です。
年神様が心地よく過ごせる場所はどこか、という視点で考えてみましょう。
鏡餅を飾るのに適した場所
- 神棚:家の中に神様をお祀りする場所がある場合、ここが最も適した場所です。
- 床の間:神棚がないご家庭では、床の間が最も格の高い場所とされます。
- リビング:家族が最も長く過ごし、集まる中心的な場所も適しています。
その際は、直接床に置かず、棚の上など少し高い場所に飾るのが良いでしょう。
逆に、年神様をお迎えするのにふさわしくない、避けるべき場所もあります。
避けるべき場所についての考え方
- 床や棚の低い位置:神様を見下ろす形になってしまうため、必ずご自身の目線より高い場所に飾りましょう。
- 玄関:玄関は家の「下座」にあたるという考え方や、人の出入りが激しく落ち着かない場所であるため、年神様がゆっくり滞在できないとして避けた方が良いという説があります。
ただし、これは地域や家の風習によって考え方が大きく異なり、一概に間違いとは言えません。 - トイレ:トイレは古くから不浄な場所とする説があるため、大きな鏡餅を飾る場所としては避けるべき、という考え方があります。
しかし、一方でトイレには「厠神(かわやがみ)」という家を守る大切な神様がおわすとも考えられています。
そのため、その神様への感謝を込めて、小さな鏡餅を別に飾るご家庭や地域も少なくありません。
鏡餅は使い回しをしても大丈夫なの?
年の瀬の準備を進める中で、昨年使った鏡餅を今年も使って良いものか、と考える方もいらっしゃるかもしれません。
この点については、お供えする鏡餅が「食べ物」なのか、それとも「置物」なのかによって、その答えが大きく異なります。
結論として、お米から作られた食べ物である鏡餅の使い回しは絶対にやめましょう。
一方で、近年非常に人気が高まっている木製やガラス製、あるいはプラスチック製の置物やオブジェであれば、毎年大切に使うことに何の問題もありません。
その理由は、鏡餅という風習が持つ本質的な意味合いにあります。
鏡餅は、単なる飾り物ではなく、年神様へのお供え物であると同時に、神様の魂(御魂)が宿る神聖なものと考えられています。
そして、松の内が明けた後、そのお餅を家族でいただく「鏡開き」を行うことで、神様の力を分けてもらい、その年一年間の無病息災を願うのです。
この一連の流れについては、農林水産省のウェブサイトでも、お正月の食文化として解説されています。
(参照:農林水産省「鏡もちの由来と美味しく食べるコツ」)
つまり、お供えしてから食べるまでがワンセットの重要な神事なのです。
そのため、昨年お供えした食べ物のお餅を今年も使い回すというのは、神様に対して大変失礼な行為にあたってしまいます。
一方で、インテリアとして作られた置物は、年神様への感謝の気持ちや敬意を表すための現代的なシンボルとして捉えることができます。
毎年飾る際は、一年間の感謝を込めてきれいに埃を払い、破損がないか確認するなど、大切に扱いましょう。
置物を飾る場合でも、神様の力をいただくという意味で、別に小さな食用の鏡餅をお供えするのが、より丁寧で伝統に沿った形と言えます。
鏡餅を先勝や先負に飾っても大丈夫?まとめ
鏡餅の飾り方について、六曜との関係から具体的な日取り、場所、そして注意点まで、様々な角度から詳しく解説してきました。
最後に、この記事の重要なポイントをリスト形式で振り返ります。
- 鏡餅を先勝や先負の日に飾ることは全く問題ない
- 気になる場合は先勝なら午前、先負なら午後の吉時間帯に飾ると良い
- 六曜は神道や仏教とは直接関係のない民間の習わしであるため過度に気にする必要はない
- 鏡餅を飾るのに最も縁起が良いと伝統的に言われるのは12月28日
- 「八」が末広がりで縁起が良いとされるのが理由
- 12月29日は「苦」を連想させるため避けるのが一般的
- 12月31日の「一夜飾り」は年神様に失礼とされるため避けるべき
- もし大晦日になったら元旦の朝に飾る方が良いとされる
- 飾る時間帯に厳密なルールはないが、余裕のある時間帯に行うのが望ましい
- 飾る場所は事前に清掃し、清らかな状態にしておく
- 神様を見下ろす低い場所や不安定な場所は避ける
- 食べ物としてのお餅は神様の力が宿るため使い回しは絶対にNG