鏡餅にゆずり葉を飾る意味とは?裏白との違いや飾り方について

お正月の準備で鏡餅を用意する際、「ゆずり葉」という飾りがセットになっていることがあります。
なんとなく飾っているものの、このゆずり葉にどのような意味が込められているかご存知でしょうか。
また、よく似た葉に裏白もありますが、その違いや正しい飾り方についても気になるところです。
この記事では、鏡餅におけるゆずり葉の意味や由来、裏白との違い、そして鏡餅全体の飾り方について詳しく解説します。
日本の伝統的な風習に込められた願いを知ることで、新しい年を迎える準備がより一層意義深いものになるはずです。
- 鏡餅にゆずり葉を飾る意味
- ゆずり葉と裏白(うらじろ)の違い
- 鏡餅の基本的な飾り方と各飾りの意味
- 鏡餅をお供えする由来と鏡開きの意味
鏡餅にゆずり葉を飾る意味とは?
鏡餅にゆずり葉を飾る意味とは?
鏡餅にゆずり葉を飾るのには、「子孫繁栄」という非常に縁起の良い、深い願いが込められています。
これはユズリハ(譲葉)という植物のユニークな生態に由来しています。
ユズリハは、春に枝先に新しい若葉が芽吹き、それが十分に育って生えそろったのを見届けてから、古い葉がその場所を「譲る」ように落葉するという特徴的な成長の仕方をします。
この様子を、親が子を大切に育て上げ、子が成長したのちに次の世代へあとを譲っていくという、理想的な世代交代の姿になぞらえました。
そこから、家系が途切れることなく代々続いていきますように、という子孫繁栄の象徴とされ、古くから縁起の良い木として正月飾りに使われています。
ユズリハの別名
ユズリハはその縁起の良さから、まさに「ショウガツノキ(正月木)」や、親子の絆を表す「オヤコグサ(親子草)」といった別名でも呼ばれています。
植物の生態そのものが、世代交代や子孫繁栄を象徴しているのですね。
昔の人が自然をよく観察し、そこに家族の未来への願いを込めていたことが伝わってきます。
ユズリハが選ばれた理由
常緑樹の多くは新しい葉が出てから古い葉が落ちるものですが、なぜ特にユズリハが選ばれたのでしょうか。
その理由として、ユズリハの葉の交代が他の植物に比べて特に目立つことや、その見た目の美しさが注目されたためだという説が有力です。
ユズリハは、常緑でツヤのある深い緑色の葉と、冬の寒い時期には珍しい鮮やかな赤色の長い葉柄(ようへい)を持っています。
この美しいビジュアルが、新旧交代のドラマチックな様子と相まって、古くから人々の心を引きつけ、新年の飾りにふさわしいと愛でられてきたのです。
ユズリハの有毒性に注意
ユズリハは縁起物ですが、同時に有毒植物としても知られています。
樹皮や葉、そして果実にはダフニマクリンやユズリミンなどのアルカロイド系の有毒成分が含まれています。
過去には家畜が食べて中毒を起こし、死に至った事例も報告されています。
正月飾りとして使う分には問題ありませんが、小さなお子様やペットが誤って口にしないよう、置き場所や管理には十分な注意が必要です。
鏡餅の裏白とゆずり葉はどう違う?
鏡餅の飾りには、ゆずり葉とともによく「裏白(うらじろ)」が使われます。
どちらも緑色の葉であるため混同されがちですが、植物の種類も込められた意味も全く異なります。
裏白はシダ植物の一種で、その名前の通り、葉の裏側が白い粉を吹いたように真っ白になっているのが最大の特徴です。
この「裏が白い」という特徴から、以下のような複数の縁起の良い意味が込められています。
- 心の潔白: 葉の裏まで白いことから、「うしろ暗いところがない」清廉潔白な心で一年を過ごせるようにという願い。
- 長寿: 葉の白さを白髪に見立て、「共に白髪が生えるまで」長生きできるようにという長寿の願い。
- 夫婦円満: 葉が軸から左右対称に一対になって成長する様子から、夫婦円満の象徴とされる。
このように、ゆずり葉が「子孫繁栄」を第一に願う飾りであるのに対し、裏白は「潔白・長寿・夫婦円満」といった、個人の心構えや家族の調和を願う飾りであり、それぞれ異なる役割を持っているのです。
意味の違いまとめ
鏡餅を飾る際、どちらも「おめでたい葉」として使われますが、このように意味が異なります。
| 飾り | 植物分類 | 主な意味 | 由来・特徴 |
|---|---|---|---|
| ゆずり葉 | ユズリハ科(高木) | 子孫繁栄・世代交代 | 新しい葉に「譲って」古い葉が落ちる様子から |
| 裏白 | ウラジロ科(シダ) | 潔白・長寿・夫婦円満 | 葉の裏が白いこと、葉が対になっていることから |
鏡餅へのゆずり葉の飾り方は?
鏡餅の飾り方には地域差もありますが、ここでは最も一般的とされる伝統的な順序をご紹介します。
まず、鏡餅を乗せる台である「三方(さんぽう)」と呼ばれる、ヒノキなどで作られた台を用意します。
三方は神様へのお供え物(神饌)を乗せるための神聖な器です。
もしご家庭に三方がない場合は、お盆や、四角い色紙(しきし)などで丁寧に代用することもできます。
基本的な飾る順番
- 台(三方など)の上に、「四方紅(しほうべに)」という四方を赤く縁取った紙を敷きます。これは天地四方からの災いを払い、一年の繁栄を願う意味があります。
- その上に、ゆずり葉や裏白を敷きます。裏白を敷く場合は、白い面を上(神様に見えるよう)にするのが習わしです。
- 大小2段の丸い鏡餅を重ねて乗せます。
- 一番上に橙(だいだい)を乗せます。
- その他、地域や家庭の習慣に合わせて、昆布、串柿、御幣(ごへい)などをバランスよく飾ります。
ゆずり葉や裏白は、お餅と台(三方)の間、つまりお餅の下に敷くのが一般的です。
神聖なお餅を直接台に触れさせず、清浄な葉の上にお迎えするという意味合いがあります。
飾る日はいつが良い?
鏡餅を飾り始める日にも縁起が担がれます。
12月28日が、漢数字の「八」が末広がりで縁起が良いとされ、最適の日とされています。
逆に、12月29日は「二重苦(にじゅうく)」や「苦餅(くもち)」につながるとして避けられます。
また、12月31日に飾るのは「一夜飾り」と言われ、大晦日に慌てて準備をすることは神様に対して失礼にあたるとして、古くから忌み嫌われています。
したがって、28日に飾るのがベストですが、間に合わない場合でも30日までには飾り終えると良いでしょう。
鏡餅にゆずり葉を飾る意味について
鏡餅の由来や食べる意味について
そもそも鏡餅は、単なるお正月の飾り物ではありません。
お正月に各家庭に迎える「年神様(歳神様)」の依り代(よりしろ)、つまり年神様が新年の間とどまるための神聖な居場所としてお供えされる、非常に大切なものです。
年神様は、私たちに新しい年の魂(生命力)を授け、五穀豊穣をもたらしてくれる神様と考えられています。
「鏡」という名前は、昔の丸い銅鏡(神鏡)に形が似ていることに由来します。
鏡は古来より神様の宿る神聖なものとされ、皇室の三種の神器の一つ「八咫鏡(やたのかがみ)」にも象徴されるように、神事において重要な役割を担ってきました。
なぜ大小2段重ねなの?
大小の丸餅を2段に重ねるのにも、もちろん意味があります。
- 太陽と月(陰と陽)を表しているとされ、これらを重ねることで吉兆を願う。
- 「円満に年を重ねる」「福が重なる」という、幸福と繁栄が続くことへの願い。
これらのおめでたい意味が込められています。
鏡開きで年神様の力をいただく
お供えした鏡餅は、松の内(一般的に関東では1月7日、関西では1月15日まで)が明けた「鏡開き」の日(一般的に1月11日)に下げて、家族で分けて食べます。
これは、年神様の力が宿った鏡餅(御魂)をいただくことで、その一年の無病息災や五穀豊穣、力を授けてもらうという、新年最初の大切な儀式です。
農林水産省の解説にもあるように、お供え物に刃物を向けるのは縁起が悪いとされるため、鏡開きでは包丁を使いません。
「切る」や「割る」という言葉も武家社会の切腹などを連想させ縁起が悪いため避けられ、年神様との縁が「開く」ように、木槌(きづち)などで叩いて「開く」という縁起の良い言葉が使われます。
お年玉の由来?
年神様の魂が宿ったこのお餅を「歳魂(としだま)」と呼び、家長が家族に分け与えていた風習が、現在のお金を入れる「お年玉」の由来になったという説もあります。
鏡餅にみかんを乗せる意味は?
鏡餅の一番上に乗っている、葉のついた柑橘類。
これは一般的に「みかん」で代用されることが多いですが、本来の伝統的な飾りは「橙(だいだい)」という果物です。
みかんと橙は似ていますが、橙は酸味や苦味が強いため、そのまま食べるのにはあまり向いていません。
では、なぜ橙が使われるのでしょうか。
それは、橙が持つ非常に縁起の良い生態にあります。
橙は、実が熟しても冬に木から落ちにくく、一つの木に新しい実と古い実が何年も(何代も)同時についたままになるという、とても珍しい特徴を持っています。
このことから、名前の「だいだい」と「代々」をかけ、「家が代々繁栄し、長寿でありますように」という子孫繁栄の強い願いが込められているのです。
最近は手に入りやすい葉付きのみかんで代用することも増えましたが、本来は「代々」の意味を持つ「橙」だったのですね。
ゆずり葉と同じく、植物の生態に家族の繁栄を願う、深い意味が込められています。
鏡餅の添える飾りのそれぞれの意味について
鏡餅には、これまで解説した「ゆずり葉」「裏白」「橙」のほかにも、地域や家庭によって様々な縁起物が飾られます。
それぞれの飾りに込められた主な意味を知ることで、鏡餅が新年の願いの集合体であることが分かります。
昆布(こんぶ)
「よろこぶ」という言葉にかけて、新年の喜びを表します。
また、古くは昆布を「広布(ひろめ)」とも呼んだことから「喜びをひろめる」という意味や、「子生婦(こんぶ)」という字をあてて子孫繁栄を願う縁起物ともされています。
串柿(くしがき)
干し柿を串に刺したものです。
柿は「嘉来(かき)」と書き、「喜びや幸せが来る」という語呂合わせで縁起が良いとされます。
また、串に刺した干し柿は、鏡餅(鏡)、橙(玉)とともに、三種の神器の「剣」を表しているという説もあります。
その他の主な飾りについても、表にまとめました。
| 飾り | 込められた意味 |
|---|---|
| 御幣(ごへい) | 紅白の紙を折った飾り。神様への捧げものであることを示し、四方に繁栄することを願う。 |
| 海老(えび) | 腰が曲がる姿を老年に見立て、腰が曲がるまでの長寿を願う。 |
| するめ | 日持ちすることから「末永い幸せ」を願う。また「寿留女」という漢字があてられることもある。 |
このように、鏡餅は一つひとつの飾りに、新しい年を迎えるにあたっての健康、長寿、子孫繁栄、豊作、幸福といった様々な願いが込められた、日本の伝統文化の象徴なのです。
鏡餅にゆずり葉を飾る意味とは?まとめ
鏡餅とゆずり葉の意味について解説しました。
お正月の伝統的な飾りには、一つひとつに先人たちの深い願いが込められています。
意味を知って飾ることで、新しい年をより清々しい気持ちで迎えることができるでしょう。
- 鏡餅は新年の神様である「年神様」が宿る神聖な依り代である
- ゆずり葉を飾る意味は「子孫繁栄」や「世代交代」の象徴
- ゆずり葉は新しい葉が生えそろってから古い葉が落ちる生態に由来する
- ユズリハは有毒植物であり、子どもやペットの誤食に注意が必要である
- 裏白(うらじろ)は葉の裏が白いシダ植物
- 裏白の意味は「心の潔白」「長寿」「夫婦円満」
- ゆずり葉は「子孫繁栄」、裏白は「長寿」などそれぞれ異なる意味を持つ
- 鏡餅の飾り方は、三方の上に四方紅、ゆずり葉や裏白を敷き、餅を乗せる
- 鏡餅を飾る日は末広がりの12月28日が最適とされる
- 12月29日(二重苦)と31日(一夜飾り)は避けるのが一般的
- 鏡餅が丸く二段重ねなのは「太陽と月」や「円満に年を重ねる」意味
- 鏡開きは1月11日が一般的で、年神様の力が宿った餅をいただく行事
- 鏡開きでは刃物を使わず、木槌などで「開く」のが習わしである
- 一番上の柑橘類は「みかん」ではなく「橙(だいだい)」が本来
- 橙は木から落ちにくく「代々」の語呂合わせで「家の繁栄」を願うもの
- 昆布は「よろこぶ」、串柿は「喜びが来る」などの意味がある
- 全ての飾りは、新年の無病息災や繁栄を願う縁起物である
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